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2018 年度 実施状況報告書

算数科の話し合い活動における「論点を整理する力」を育成する学習指導モデルの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K14049
研究機関島根大学

研究代表者

下村 岳人  島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (90782508)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード算数教育 / 論点を整理する力 / 交渉 / 数学的知識の構成 / 折れ線グラフ
研究実績の概要

本研究は,小学校の算数科の話し合い活動において「論点を整理する力」の育成を目指した学習指導モデルの開発を目指すものである.研究計画に従い,今年度は子どもの話し合い活動を捉えるための記述枠組みの構築とともに,その記述枠組みに基づく「論点を整理する力」に関する子どもの実態を明らかにするを目指した.具体的には,会合を3回,作業部会を2回のほか,授業に係る事前及び事後検討といった個別の打ち合わせを通して,以下の点について研究を進めた.
1.昨年度に引き続き,算数科において「論点を整理する力」を育成することの意義について,国内外の文献および先行研究をもとに基礎的考察を行った.本年度は特に発話者の意図に焦点を当て,発話内における個人の発話の意図と,論点を整理することとの関連についての検討を行った.
2.子ども同士によってどのように論点が整理されていくのかを検討するにあたり,本年度は,算数科における子ども同士の交渉に着目した.そして,実際の小学校算数科の授業分析から,交渉にみられた発言の意図を捉えるための記述枠組みを構築するとともに,その枠組みを用いた授業分析を開始した.
3.小学校1(3つの数の加減),5年生(分数の除法),6年生(割合の活用)の算数科授業において実験授業を計画・実施およびを分析を行った.そこでみられた交渉の様相を分析することから,子ども同士の発話の意図が関連し合うことによって,数学的知識がそれぞれの子どもに構成されていく様子を事例的に明らかにした.
4.国内外において,研究の途中経過について学会発表および論文発表を行った(国外1回,国内3回).そこでの意見交換を通して,最新の情報収集に努めた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度の研究計画では,学校現場との研究協力体制を拡充するとともに,調査・授業実践に関する指導体制を整えつつ,「論点を整理する力」を捉えるための記述枠組みを構築すること(研究目的(2)),また,準備が整い次第,研究目的(3)に関する学習指導モデルを計画することに移ることとしている.
「研究体制の整備・強化を図ること」については,昨年度に引き続き,研究体制の整備・強化を図ることができた.具体的には,小学校3名,中学校2名の学校現場の研究協力者を得ることができた.また,それらの協力者による実験授業を計画・実施するとともに,それらの授業の分析をすすめることができた.
「研究目的(2)」については,研究協力者により実施された算数科の授業分析を通して,発話の意図を捉えるための記述枠組みを構築した.具体的には,Searleの発話内行為に示唆を得て,小学4年生の「折れ線グラフ」単元の授業にみられた子どもの発話の意図を分析した.その分析結果からは,子どもの実態に留まらず,どのような交渉を行うことで数学的知識が協定されていくのかという視点からの考察も行うことができた.また本年度は,本研究から得られた知見を,論文にまとめる発表することができたことは大きな成果であったと捉えている.
記述枠組みの構築に伴い,暫定的ではあるがそれを参照した授業分析が可能となった.そのため,いくつかの授業(小学1年,5年,6年)を本研究で作成した記述枠組みを用いて分析を行った.そこからは,記述枠組みをより精選していくことの必要性が見えてきた.今後は,様々な学年および領域における検証を繰り返し,汎用性および規範性のある枠組みとなるよう絶えず改善していくことから,子どもがどのように論点を整理していくのかを捉える枠組みを構築していく必要がある.

今後の研究の推進方策

平成30年度の研究計画は,概ね順調に進展しているので,引き続き研究計画に従って研究を進めていく.
研究計画では,令和元年度は,「話し合い活動における「論点を整理する力」を育成するための学習指導モデルを開発し,その妥当性や効果を授業実践等を通した検証により明らかにするとともに,実際の授業実践や調査等を通して,取り組みの妥当性や有効性を明らかにする.」としている.
そこで令和元年度は,引き続き研究協力者との協議を行いながら,論点を整理する力の育成を目指した学習指導モデルの構築を目指す.具体的には,研究協力者による実験授業の実施や,質問紙調査を重ねるなかで,本研究で構築した学習指導モデルの有効性について検討する.
また,現在検証中である記述枠組みについては,様々な観点からの検討を通して,より信頼性の高い枠組みとなるよう,学習指導モデルと合わせて改善・構築を行う.
さらに,研究成果については,国内外の学会で発表したり,論文にまとめたりしたりすることから,発信を行っていく.また,「算数科における論点を整理する力の育成を目指した学習指導モデル」をまとめたリーフレットなどを作成し,学校現場への配布や教員研修での使用を目指す.

次年度使用額が生じた理由

予定していた国内学会に校務の関係で参加できないものがあったことや,当初の予定よりも安価で国際学会に参加できたことにより,旅費を抑えることができたことによる繰越金が生じた.この点については,次年度に国際学会での発表を予定に入れたので,そこに充当したい.また,購入を予定していた物品がメーカーの商品入れ替えと重なり,平成30年度内に購入できない物があった.その分の助成金については,本年度の購入に充当する.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 算数科授業における数学的知識の構成にみる協定の特徴に関する一考察-Searleの言語行為論による談話分析を通して-2018

    • 著者名/発表者名
      下村岳人
    • 雑誌名

      日本数学教育学会第51回秋期研究大会発表収録(論文発表の部)

      巻: 51 ページ: 97-104

    • 査読あり
  • [雑誌論文] STUDENTS’ EXPANATIONS ABOUT THE AREA PROBLEM IN ELEMENTARY SCHOOL: ASSESSMENT FRAMEWORK2018

    • 著者名/発表者名
      Taketo Shimomura, Yutaka Kondo
    • 雑誌名

      ICMI-EARCOME8 Proceedings

      巻: 2 ページ: 306-312

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 算数科割合単元におけるアナロジ教示の学習効果2018

    • 著者名/発表者名
      山崎裕也,下村岳人,石野陽子
    • 雑誌名

      島根大学教育学部附属教育支援センター研究紀要 島根大学教育臨床総合研究

      巻: 17 ページ: 89-103

  • [学会発表] 数理認識能力の発達にみる相互行為の特徴に関する一考察2018

    • 著者名/発表者名
      下村岳人,齊藤英俊
    • 学会等名
      日本教育実践学会第21回研究大会
  • [学会発表] 見出し説明する過程を重視した算数授業 -算数科授業における話し合いに関する一考察-2018

    • 著者名/発表者名
      下村岳人,近藤裕
    • 学会等名
      第100回全国算数・数学教育研究(東京)大会 (2018.8.3 東京理科大学)
  • [学会発表] 数学的な見方を育成する学習指導の追究-計算の仕方と意味に焦点をあてて-2018

    • 著者名/発表者名
      錦織祐介,鶴原渡,下村岳人
    • 学会等名
      第100回全国算数・数学教育研究(東京)大会 (2018.8.3 東京理科大学)

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公開日: 2019-12-27  

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