研究課題/領域番号 |
17K14050
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
角田 将士 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70432698)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 歴史教育 |
研究実績の概要 |
何をどう教えれば,学習者にとって意義深く,民主主義社会の形成者にふさわしい資質・能力,市民性を育成し得る日本史教育になるのか。この問いにアプローチすべく本研究は,伝統的な歴史教育と民主主義を基盤とした新教科社会科との関係性をめぐって多様に展開した1950年代の歴史教育論に着目し,その中でも,国家主義的で画一的な国史教育から脱却し,学習者である子どもたちの視点を意識しながら,新しい日本史教育のあり方を体系的に論じた和歌森太郎の所論,および和歌森の論に影響を受けた授業実践などを中心に取り上げ,それらの分析検討から,知識伝達に陥りがちな日本史教育に関する改革の具体像を明らかにし,学習者が「学ぶ意義」を意識した日本史教育のあり方を実現するための理論上,実践上の課題を明らかにしようとするものであった。 この内,今年度は,主に分析対象となる資料の収集と分析視点の明確化を目的としていた。研究の遂行上,必要となる資料の収集については,ある程度,進めることができた。また,それらの分析を進める際の視点を明確にするために,学習者の視点を重視しようとしている,新学習指導要領やその基盤となった中央教育審議会答申等の内容についても検討を進め,いくつかの論稿にまとめた。合わせて,そのような今日的な視点から,戦後初期に構想された地域教育計画(プラン)について分析することで,本研究の研究方法を省察するとともに,研究の視角を広げることもできた。また,本研究の成果を援用した具体的な授業モデルの提案や授業改善に向けた提言なども行い,本研究の持つ社会的意義を確かめることもできた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,戦後初期における実践報告や評価問題の例を取り上げて分析を行うが,それらが収録された当時の教育雑誌等は散逸が著しいため,体系的な収集に時間を要する。 また,本研究は,学習者の視点を意識した新学習指導要領等に示された今日的な視点を,戦後初期の歴史教育論や実践を分析する際の視点として意識しているが,新学習指導要領が告示されるタイミングと研究期間が重なっており,それらを受けた各界における動向や議論の成熟の度合いを見極めつつ,研究を進めていく必要があったため。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き資料の収集に努めるとともに,【課題1】和歌森太郎は日本史教育を通してどのような認識・資質・能力を育成しようとしたか,【課題2】和歌森太郎が構想した日本史教育はどのような実践として具現化されたか,【課題3】和歌森太郎の主張はどう受け止められ,そこにはどのような課題があったか,という3つの課題を意識して,当時の著作や論稿,教科書,実践記録や評価の例についての分析検討を進める。それらの検討を通じて,「民主主義社会の形成者にふさわしい資質・能力,市民性の育成を目標とする日本史教育は,何を内容の系統として,どのような学習方法に依るべきか」そして「日本史を学ぶ意義とは何か」といった本質的な問いに対してアプローチすることを最終的な目標とする。そして,それらの研究成果を可能な限り早い段階で論稿にまとめるとともに,新学習指導要領への対応を求められている今日の学校現場に対する示唆として,具体的な授業改善の視点や授業モデルの提案も行いたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度については関連学会が近隣で開催されたため,旅費としての執行額が当初の予定よりも少なくなった。また,資料の収集を予定通りに行うことができなかっため,未使用分が生じることとなった。本年度の未使用分については,主に次年度の資料収集のための費用として執行を予定している。合わせて,関連学会への参加費用としても執行を予定しているが,次年度については,関連学会の国際交流事業に参加し,研究視点の国際化にも努めたいと考えているため,その渡航費用としても執行予定である。
|