研究課題/領域番号 |
17K14053
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
川上 貴 宇都宮大学, 教育学部, 講師 (90709552)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | モデリング / モデル / 統計的モデリング / 数学教育 / 教員研修 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,モデリングの特性を生かし,実世界と関連づけて統計的概念を醸造しながら統計的推論を促す,小学校算数及び中学校数学の授業枠組みを構築し,統計領域の授業改善に活用することである。第2年次は,以下の3点に取り組んだ。 第1に,第1年次に引き続き,文献解釈を通じて,子どもの統計的推論を促す上でのモデリングの機能や特質を理論的に検討した。特に,近年行われ始めている,統計的モデリングの指導と学習に関する研究の国際的動向を体系的にレビューし,それらの研究で着目されている(統計的)モデルの役割や(統計的)モデリングの特質などについて明らかにした。こうしたレビューの成果は,『日本数学教育学会誌(第101巻第3号)』にて査読付学術誌として掲載された。 第2に,モデルとモデリングの視点を取り入れた小学校第2学年の統計の授業を設計・実践し,児童の統計的推論の様相を分析した。その結果,統計的推論の羅針盤としてのモデルの役割と,以前の統計的推論の過程とその結果を以後の統計的推論に有機的に繋げていく力動性・連続性・累積性を帯びた活動としてのモデリングの役割を事例的に明らかにした。こうした成果を,第10回統計教育国際学会(ICOTS10)の査読付論文として発表し,Excellence Award for Early Career Paper at ICOTS10を受賞し,国際的に高く評価された。 第3に,第1年次に実施した,モデリングを志向した教員研修プログラムにおける参加者の算数・数学教科書の問題に対する捉え方の特徴や変容を「現実の世界」と「数学の世界」の視点から分析した。分析の成果は,日本科学教育学会の『科学教育研究(第42巻第4号)』にて査読付学術誌として掲載された。さらに,第8回東アジア数学教育国際学会(EARCOME8)の査読付論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第1に,今年度の中心的な研究計画であった「授業構成の暫定枠組みの設定」と「教材開発と授業実践・分析」が予定通りに進み,学術誌掲載や学会発表を行うことができたからである。第2に,第3年次以降の計画であった「教員研修の開発と実施とその分析」が進み,学術誌掲載や学校発表にまで漕ぎつけたからである。
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今後の研究の推進方策 |
第1に,分析データが残っている授業における児童・生徒の統計的推論の様相の分析を詳細に多角的に分析し,国際ジャーナルや国内学術誌に投稿することである。第2に,教員研修プログラムの分析を多角的に進め,統計的モデリングの教員研修プログラムへの開発の知見を導出する共に,その成果を国際ジャーナルに投稿することである。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張のための飛行機を早めに予約したため,経費を安く済ませることが出来た。次年度の図書費、出張費に使用する予定である。
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備考 |
2018年7月 国際統計教育協会(IASE) Excellence Award for Early Career Paper at ICOTS10受賞
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