研究課題/領域番号 |
17K14054
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研究機関 | 信州豊南短期大学 |
研究代表者 |
宮本 浩紀 信州豊南短期大学, 幼児教育学科, 講師(移行) (00737918)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 道徳性 / 教育測定運動 / character education / 効果測定 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、主に次の2点に関する研究を行った。 ①近年のアメリカにおける効果測定制度の現状分析 アメリカにおいて、教育分野におけるエビデンス産出の必要性が明確に打ち出されたのは、ブッシュ政権下の2001年に成立した「落ちこぼれを出さないための2001年法」(No Child Left Behind、以下NCLB法とする)である。同法の中で「科学的根拠のある研究」(Scientifically-Based Research)というキーワードが数多く用いられたことは、子どもの学力向上や問題行動の防止を実現する可能性を高める一方、多大な公的予算を基盤として策定・実行される教育政策の有効性に関する検証の必要性を強調するものであった。本研究では、まずは、必ずしも道徳性に限定することなく、アメリカの教育分野における効果測定制度の変遷を探ることにより、現状の効果測定制度の特徴を把握することに努める。
②19世紀末から20世紀初頭における道徳性研究の概要把握 教育測定運動が道徳性研究にも波及した19 世紀末から20 世紀初頭は、道徳性育成が宗教・非宗教双方の枠組みでなされていた時代である。道徳性概念の規定にも宗教の影響が多分に認められる以上、まずはその概念規定を把握する必要がある。当時、現在の道徳性を含む人間を表す用語としては、moralやcharacter、personalityなど種々のものが用いられていたことは周知のとおりであるが、これらのうちどの言葉に重きを置くかについては論者によって異なるため、それらすべてを視野に入れた研究動向を探ることが肝要である。その際、研究上の時間的制約に鑑み、本研究では、ローバックによる研究蓄積の類型化を参照しつつ、道徳性の効果検証に関わる歴史的研究の選定作業を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において、平成29年度は、調査対象及び調査方法の点で歴史的かつ学術的価値の認められる道徳性研究の比較・分析を通じて、道徳性の効果検証に関わる歴史的起源を明らかにし、平成30年度以降に、現今の効果測定制度の意義と課題を抽出するための視座を得ることを目指すことを目的としていた。 「研究実績の概要」にあげた2点のうち、①について概ね完了し、その成果はアメリカ教育学会 第29回大会(於 愛知教育大学)において、「向社会性育成プログラムに関するアセスメントの枠組み―アメリカ道徳教育におけるエビデンス産出の現実と課題―」という表題のもと発表することができた。 他方、②については、ローバックの著作を通じて研究対象を絞ることに努めたものの、道徳教育及び道徳性研究における宗教の影響把握を行うことの必要性が認められたため、平成29年度の期間において、道徳性の概念規定を終えることは見送り、引き続き、平成30年度も実施する方向で修正を図った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は、当初立てた計画に基づきつつも、先述のとおり、道徳性の概念規定に関してはやや遅れが認められるため、一部修正の上で、平成29年度分の研究の残りと平成30年度分の研究に並行して取り組んでいく。 具体的には、現今のアメリカにおける効果測定制度の分析を行うべく、(a)各教育・研究機関による効果測定の整理・分析、及び(b)研究成果の横断的な比較・分析という二点の解明を目指す。この点に関しては、平成29年度に前倒ししてアメリカにおける効果測定制度の変遷を把握済みであるため、具体的に人格教育(character education)を実施する諸組織の研究手法について相互比較研究を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
・当初の計画では、平成29年度にPCを購入する予定だったところを平成30年度に変更したため、差額分が生じた。
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