研究課題/領域番号 |
17K14056
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
有海 順子 山形大学, 障がい学生支援センター, 講師 (50633921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 意思表明 / 聴覚障害学生 / 合理的配慮 |
研究実績の概要 |
本研究は「合理的配慮に関する聴覚障害学生の意思表明スキル獲得とその活用過程」をテーマに、聴覚障害学生がどのような経験や要因によって意思表明スキルを獲得し、活用していくのか、その過程ならびに関連要因を当事者の語りから明らかにするものである。 2年目にあたる今年度は、昨年度に引き続き、さらに3名の対象者にインタビュー調査を行うとともに、インタビューで収集した調査データの文字化と、意思表明スキル獲得および活用過程に関する質的分析に注力した。当初の予定では、対象者を10名程度としていたが、対象者6名の調査結果からでも一定の傾向が見いだせる可能性が高いため、対象者をこれ以上増やすことはせず、追加調査により事例を深く掘り下げることで結果の精緻化を図ることとした。 質的分析にあたっては、MAXQDAという質的分析ソフトを用い、得られた発話データからテーマに関連する語りを抽出し、さらにコード化を行った。現時点では81個のコードが生成されているが、コードの個数が多いため、さらなる精緻化が必要であり、分析を継続する必要がある。さらに、分析を進めていく中で、意思表明スキル獲得および活用過程を明確にしていくためには、対象者に再度尋ねるべき事項が出てきたこと、さらなる結果の精緻化のため、対象者への追加調査も実施した。 本研究のオリジナリティは、聴覚障害者の意思表明スキル獲得過程のみならず、大学卒業後、社会にて意思表明スキルをどのように活用しているのか、その過程を明らかにすることである。したがって、今後の分析では意思表明スキルの獲得段階および活用段階、この2つの段階に分け、関連要因等の整理も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通りに進めることができたが、研究の進捗がやや遅れている。その理由として、(1)事例を深く掘り下げるために追加調査などが必要となり、インタビュー調査に時間を要したことと、(2)得られた調査データの文字おこしに時間を要したことがあげられる。 (1)計画の段階では10名程度を予定していたが、1年目(平成29年度)に実施できたインタビューは3名であった。意思表明スキル獲得に関するエピソードを多岐に亘り収集し、さらにライフヒストリーとして充分に聞き取るために時間を要したため、3名にとどまった。また今年度も3名調査を行い、さらに前年度の対象者への追加調査も実施したため、遅れている現状である。 (2)本研究の対象者は全て聴覚障害者であり、その大半が現在手話を第一言語とする方であったため、分析資料生成のための「手話の日本語翻訳ならびに文字化」の作業に時間を要した。手話から日本語への翻訳技術を有する者への協力を得たことで、正確かつ効率的にデータの文字化を図るよう努めたが、インタビューデータ量の多さと経費節約の関係で時間を要し、本格的な分析に着手する時期が遅れた。 分析着手が遅れたため、成果発表の予定も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度は、これまでの研究成果を踏まえ、以下の項目について遂行する。 (1)質的データ分析による概念化・精緻化ならびに過程の検討、(2)研究成果の発表および論文執筆活動 (1)関連する先行研究を参考に質的データ分析を行い、得られた発話データの概念化(コード化)を行う。現在は81個のコードが生成されているが、コード個数が多いため、さらに精緻化を行う必要がある。その後、得られたコードを基に意思表明スキル獲得および活用過程の検討を実施する。 (2)分析と並行して、第一段階の研究成果を教育現場に還元する琴を目的に、学会発表を行う。具体的には10月上旬に開催予定の「全国保健管理研究集会」において発表(コード化に関する成果)を予定している。さらに分析を進め、特殊教育学会誌等への論文投稿ならびに全国高等教育障害学生支援協議会等、関連学会における成果発表を目指す。
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