研究課題/領域番号 |
17K14057
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
川島 慶子 福島大学, 子どものメンタルヘルス支援事業推進室, 研究員 (10773939)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 震災支援 / 発達障害 / 帰還 / 子育て / ASD |
研究実績の概要 |
東日本大震災後の福島第一原子力発電所事故(以下、原発事故)の影響から避難生活を経験した発達障害特性をもつ子どもとそのきょうだい、保護者を対象に質問紙調査を実施した。質問紙は、240名に配布し114名(78世帯)から回答を得た(47.5%)。内訳は、発達障害特性をもつ子ども97名(自閉症スペクトラム、ADHD等;未診断例含む)、定型発達の子ども(障害のある子どものきょうだい児)17名である。 質問紙の結果から、保護者の抑うつ・不安(K6)の得点の高さと子どもの強みと困難さに関する質問紙(SDQ)の困難度の高さは強い相関を示した。避難中の保護者と帰還や生活再建後の保護者を比較すると、不安・抑うつや健康関連QOLに有意な差はなかった。一方で、震災後の転居回数とWHOQOLの身体的領域で負の相関がみられ、転居回数が多いほど身体的領域のQOLは低いことが明らかとなった。 また、保育園や幼稚園、学校の先生のサポートについては、居住形態による差はほとんどみられなかったものの、仮設住宅等に住んでいる世帯は、帰還や生活再建後の世帯と比べて「(自宅で)子どもが遊ぶための十分なスペース」、「地域や友人の子育てサポート」で有意に低い結果を示しており、特に家庭保育中(未就園)の発達障害特性のある子どもの子育てでは、避難先で孤立しやすく、人とのつながりや遊び場などの支援ニーズが高いことが推測された。 対象児のリクルートの際に生活上の困り感や子どもの発達に関する相談があげられた場合は、関係機関と連携して対応した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、発達障害特性のある子どもとその保護者(対象群)のリクルートについて、目標とする約100組に概ね到達し、次年度以降も継続的な質問紙調査の協力の同意が得られている。また、今年度の研究成果については次年度の学会で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度と同じ対象者に対して半年に1回質問紙調査を実施し、居住環境の変化(帰還、生活再建等)と支援ニーズの変化について検討する予定である。また、福島県内で原発事故の影響の少なかった地域の発達障害のある子どもとそのきょうだい、保護者を対照群として約100組を目標に調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、3年間の縦断的研究のため3年間を通して使用する必要がある。次年度は今年度の対象者への追跡調査に加え、対照群への調査を行う。主に質問紙の配布回収に係る郵送費用、謝礼に使用する予定である。
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