研究課題/領域番号 |
17K14058
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松原 正樹 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (90714494)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 聴覚障害支援 / 聴覚認知 / 聴能訓練 |
研究実績の概要 |
残存聴力を持つ感音性難聴の聴覚障害者を対象に、音の聴取能力を客観的・定量的に把握するために音響学に基づく音認知テストの開発と、個々の聴取能力に適応した音楽トレーニングシステムの構築を目指す。残存聴力のある聴覚障害者の環境音や音楽の認知において、聴力レベルが同様でも聴こえ方が異なり、周波数・時間変化の聴き分け能力や音楽経験に関連があることがこれまでの研究により示唆された。本研究では音響学に基づいて音認知テストの刺激音を適切に選択することで、聴こえの様相を客観的・定量的に把握することを目指す。 平成30年度は聴覚障害者15名と健聴者15名を対象とした同定課題の実験結果を比較分析し、正確な同定が困難である場合に解答内容にどのような傾向があるのか調査した。その結果、個人ごとに異なる解答の傾向が観測され、要因の一つとして、音に対する関心の程度が挙げられた。最終的に聴覚障害者の環境音同定を捉えるためには、聴覚障害者自身に関する要素(聴力、障害の種類、聴覚補償機器の活用具合、音の関心など)や、刺激音に関する要素(音響特徴量、背景情報、カテゴリ、実世界における音圧の違いなど)を含めた総合的な検討が必要であることがわかった。 環境音そのもののデータ不足およびその音に対する不正解データの不足の両面が課題として浮き彫りになった。そこで新たに環境音および感性反応データを蓄積するためのプラットフォームの構築に取り掛かった。またもう一つの課題である能力に適応した課題を提示する手法についても検討を行った。具体的には項目応答理論を用いてテストの回答から学習者の能力とテストの問題の適切さを同時に推定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体計画のうち分析フェーズで聴取実験から新たな重要な課題を発見した。その結果、開発フェーズでは当初の計画とは異なるプラットフォームの開発必要性が明らかとなった。環境音および感性反応データを蓄積するためのプラットフォームのための基盤技術の検討を行い開発にも着手していることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は平成30年度に明らかとなった新たに開発することになったプラットフォームの構築を完了し、それを利用したテスト、実験を行う予定である。また適応的な能力測定方法をプラットフォームに組み込むことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は実験の詳細な分析結果を学会発表予定であったが、国内学会発表のみ行い、国際会議発表の機会に恵まれなかったため旅費の使用が計画より少なくなった。また実験を新たに行う前にプラットフォームを構築する必要が生じたので、今年度の実験費用相当を次年度の開発費用に充填する予定である。
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