研究課題
残存聴力を持つ感音性難聴の聴覚障害者を対象に、音の聴取能力を客観的・定量的に把握するために音響学に基づく音認知テストの開発と、個々の聴取能力に適応した音楽トレーニングシステムの構築を目指す。令和元年度までの研究成果により、聴覚障害者自身に関する要素(聴力、障害の種類、聴覚補償機器の活用具合、音の関心など)や、刺激音に関する要素(音響特徴量、背景情報、 カテゴリ、実世界における音圧の違いなど)を含めた総合的な検討が必要であることがわかった。加えて、環境音そのもののデータ不足およびその音に対する正解・不正解データの不足の両面が課題となった。そこで環境音および感性反応データを収集・蓄積するためのプラットフォーム構築の研究に舵を切った。令和二年度は、令和元年度に実装したデータ収集プラットフォームにおける下記の2つの機能を含むタスクインタフェースの改善を行なった。(1)録音データ収集:任意の環境音を収録してアップロードするためのタスクインタフェースを構築し、PCでもスマホでも動作するように改善した。(2)感性反応データ収集:提示された任意のマルチメディアデータに対する感性反応を入力できるタスクインタフェースの改善を行なった。既に手に入れていた音以外のデータでユーザビリティテストを行った結果、入力フォームの構成によってデータの品質が異なることや社会的・文化的コミュニティの違いから正解が一意に定まらないことがわかり、多数決などの単純なデータ統合手法では解決できないことが判明した。これらの研究結果を受けて感性反応データを収集・蓄積するためには回答者一人一人の能力だけでなく嗜好性も考慮してデータ統合することが本質的な課題であることが判明した。
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