研究課題/領域番号 |
17K14060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武長 龍樹 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50629037)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 重度・重複障害 / コミュニケーション / 定位反応 |
研究実績の概要 |
重度・重複障害児へのコミュニケーション支援においては、対象児の覚醒水準の確認や外界へ注意が向きやすい環境の調整が重要であると考えられる。そのために、本研究は定位反応に着目した。平成29年度におこなわれた無線デバイスによる振動刺激を提示する個別の実験的観察をもとに、平成30年度は、デバイスがない日常的な状況下における定位反応を把握するために、人のタッピングによる個別の実験的観察を行なった。実験的観察は、特別支援学校と東京大学先端科学技術研究センターにおいて平成30年6月~平成31年2月にわたって行われた。さらに、実験的観察において録画された映像における対象児の動きの変化をモーションヒストリー技術によって可視化し、これまで確認されていた振動刺激だけでなく、タッピングによっても自己刺激行動が減少し、注意が外界へ向かっていると解釈でいる定位反応が確認できる事例が確認された。さらに、手、足、頭部などの身体部位による反応の違いについても検討を加えた。加えて、対象児の動きの変化の時系列データを身体部位ごとに算出し、刺激の提示から反応が生じるまでの反応時間の推定が行われた。それにより、日常的な場面において刺激から反応を待つべき時間の目安が明らかになり、タッピングによる定位反応の確認の信頼性が向上することが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、特別支援学校における重度・重複障害児の触刺激に対する定位反応の時間的・空間的特徴を明らかにし、今後の教育的実践につなげることである。平成30年度は、そのための個別に人によるタッピングを含めた実験的観察を行う計画であり、滞りなく実施することができた。手と足の身体部位による違いが明らかになる事例がみられた。重度・重複障害児の動きの可視化および、時系列データの統計的解析については、学会発表を行なった。したがって全体的にみれば本研究は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までの実験的観察を踏まえた教育的実践を行う予定である。そのために時系列データの分析から明らかになった反応時間をもとに、外界への注意が向きやすい状態での、教育的介入を行う。介入前後での定位反応や探索行動などの児童の動きの解析から、介入効果の効果測定を行う予定である。あわせて、日本特殊教育学会第57回大会(令和1年9月開催)においても、引き続き結果を報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
翌年度に予定される教育実践の観察を円滑に進めるめの観察室で使用する物品の予定を購入していたが、納品が遅れたため。
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