重度・重複障害をもつ児童・生徒における触・振動に対する定位反応の定量化および教育支援に関する研究を行った。重度・重複障害児へのコミュニケーション支援においては、参加児と支援者のかかわりの前提として参加児の覚醒水準を確認した上で外界への注意が向きやすい状況をいかに調整し実現するのかが重要である。そのために本研究は定位反応に着目した。平成29年度におこなわれた無線デバイスによって振動刺激を提示する実験的観察、平成30年度におこなわれた人のタッピングによって触刺激を提示する実験的観察をもとに、適切な刺激の種類や刺激すべき身体部位および刺激提示から反応を待つべき時間の目安を明らかにし、令和元年度には定位反応を活用した教育的かかわりを実施した。それにより、頭頂部への接触によって定位反応を確認した後に全身の緊張が弛緩し音楽に対する注意の持続時間が延長した事例や、手の指先への接触による定位反応の確認後に音楽を提示した場合には手のみならず顔や足の運動が活発になる事例などが明らかになった。このように実験的観察を活用しながら録画された映像をモーションヒストリー技術によって定量化することによって、重度・重複障害児の定位反応の空間的・時間的特徴をとらえ、教育的実践へつなげられることが示唆された。このような重度・重複障害児の動きに関する定量的データは、根拠に基づいた教育実践を教育場面へ広げていくという観点においても有用だと考えられる。
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