研究課題/領域番号 |
17K14065
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
狗巻 修司 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (30708540)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 反復的行動 / こだわり / 支援者のはたらきかけ |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害児の「こだわり(反復的行動)」に関する先行研究のレビューを引き続き実施した。また,反復的行動が頻回にみられる1名の自閉症スペクトラム障害児を対象とし1年間の縦断的観察を実施した。 2018年度は観察の中でみられた「こだわり」の質的変容についての検討を中心に行うとともに,「こだわり」行動の変容プロセスにおける支援者との関係性と支援者のはたらきかけ方との関連についての検討を実施した。 その結果,支援場面の中で「こだわり」に費やす時間数(時間の割合)から3つの時期(Ⅰ~Ⅲ期)に区分された。Ⅰ期においては,「こだわり」行動に従事する割合が支援時間内の半数以上を超え,その中でみられた行動パターンも数個に限定されていた。Ⅱ期になると「こだわり」行動に従事する時間が支援時間の半数以上であることに変化がみられないが,その中でみられた行動パターンが多様化するとともに,Ⅰ期からみれていた行動に質的な変容がみられた。そしてⅢ期では,支援開始当初からみられていた「こだわり」および「こだわりに関連する行動」に従事する時間が減少し,やがて支援時間内でみられなくなること,および,支援者との遊びの中で新たな「こだわり」が生起し始め,新たな「こだわり」は支援者の存在が前提となっていることが示された。 支援者との関係性や支援者のはたらきかけとの関連についての分析は現在実施している段階である。現時点では,観察対象児の「こだわり」行動の変容に伴い,特にⅢ期から対象児の遊びに支援者自身が参入者としてその存在を持ち込むはたらきかけが行われるようになり,そのことを契機としてそれまでの「こだわり」の生起頻度が減少し消失していくとともに,支援者の存在を前提とした(支援者と一緒に行うことでしか成立しない)「こだわり」が新たなにみられ始めることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に実施した予備的観察から明らかとなった分析指標を用いて,1名の対象児の継続的な観察を実施したこと,および,支援者へのインタビュー調査も実施できたこと
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今後の研究の推進方策 |
今後は観察対象を複数名に広げ,各対象児にみられる「こだわり」の変容過程について分析を進めていく予定である。また,引き続き自閉症児の反復的行動に関する文献調査を行い,「こだわりを活かす」という視点からの支援の有効性について明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた機材の一部が,既有の機材で代用できたこと,参加を予定していた学会等に,他の業務のため参加できなかったこと,そして,データの分析が順調に進み,評定者として雇用する予定だった人件費が削減できたことが主な理由である。 次年度には,研究実施に必要となる機材や人件費,研究成果を発表する学会発表にかかる旅費等に充てる予定である。
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