香川大学大学院教育学研究科特別支援教室に来談した,小学校1年生から5年生までの読みに困難がある児童11名を対象に,RAN課題(仮名条件,数字条件,線画条件,線画と数字の交互条件)遂行中の眼球運動を注視点追跡装置を用いて計測し,RAN課題の刺激条件が音読時間と眼球運動に及ぼす影響,ならびにRAN課題の音読時間と眼球運動の関連性について検討した。眼球運動については,眼球停留回数と復帰回数を指標として取り上げることにした。 RAN課題の刺激条件による音読時間の差について検討するため,一元配置分散分析を行った結果,仮名条件と数字条件,線画条件と交互条件の対比以外で有意差を認めた。同じく,刺激条件による眼球停留回数の差については,仮名条件と線画条件,数字条件と線画条件,数字条件と交互条件の対比において有意差を認めた。仮名や数字の処理のような文字-音の変換に比べて,線画の処理における意味的なアクセスが,音読時間とともに眼球停留回数も増大させることが示唆された。 さらに,RAN課題の音読時間と眼球停留回数ならびに復帰回数の関連性について検討した結果,分布にばらつきがあり,個人差が大きいことが見受けられた。事例分析において,眼球停留回数が極端に多い事例,眼球停留回数や復帰回数が少なく安定的な眼球運動軌跡を示しているものの音読速度が遅い事例など特徴的な事例を抽出し,その背景にある要因と特性に応じた指導法について考察した。
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