研究課題/領域番号 |
17K14067
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
藤野 陽生 大分大学, 教育学部, 准教授 (20707343)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 筋ジストロフィー / 筋強直性ジストロフィー / QoL / 認知機能 / 患者報告式アウトカム |
研究実績の概要 |
筋疾患にはさまざまな病態が含まれるが、筋ジストロフィーは進行性の筋の委縮を主症状とする難病である。その中でも、筋ジストロフィー児・者では、全般的な知的能力に問題はなくとも、自らの病気の理解が十分でないために、適切なセルフマネジメントが難しくなる場合がある。その結果として、適切なセルフケアが行われず、生活の質(QoL)が大きく損なわれてしまうことになる。彼らの病気の状態に応じたセルフケアを進め、それを維持していくためには、医療的な指導だけではなく、自身の疾患について理解することが必要となる。 2017年度は、筋ジストロフィー児・者のQoLに影響する要因として、どのようなものがあるかをさまざまな観点から検討し、横断的調査によって、QoLと関連する要因を探索した。その結果として、特に、筋強直性ジストロフィーの者においては、海外の先行研究でも見いだされていたように、抑うつや疲労感などの心理的症状が非常に大きなQoLの規定要因となっていた。さらに、アパシーといった無気力に関する症状やワーキングメモリ、注意機能といった認知機能の側面が患者自身のQoLの評価と関連することを見出し、国際誌に研究論文として成果を発表した(Fujino et al., in press, Muscle & Nerve)。さらに、筋ジストロフィーはその症状の特性から、一般の人に使用されるQoL評価では妥当な結果が得られないことから、さまざまな尺度の特性を踏まえて利用することが必要となり、その中でも、疾患特異的な尺度を利用することの意義を明確にした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度には、研究計画の主要な部分であった、QoLに影響する要因を探索することについて、論文として国際誌に発表することができ、一定の評価を得た。さらに、それらの成果については、国際学会でも発表し、海外の研究者らとの意見交換も行った。一般社団法人筋ジストロフィー協会のホームページに、一般向けに、研究成果を解説する記事を執筆し、一定程度、成果の還元も行うことができた。今後、さらに研究を推進していく必要はあるが、おおむね順調に達成していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度に続き、横断研究のデータ取得を引き続き実施していく必要がある。また、今回の検討で見いだされた認知機能や心理的要因について、網羅的に検索することは実臨床への還元を見据えた際に困難があるため、短縮版の開発などを検討する必要がある。さらに、海外での支援方策の状況を参照しながら、支援上の課題を検討していく。筋疾患はその多くが希少疾患でもあるため、関連する施設・領域の国内外の研究者とコミュニケーションをしながら、研究をさらに推し進めていくことが必要である。
|