研究課題/領域番号 |
17K14070
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮木 秀雄 山口大学, 教育学部, 講師 (30710785)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 通常の学校 / 特別支援教育コーディネーター / 専任 / 兼任 / 業務課題 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、通常の学校の特別支援教育コーディネーターの専任化によりコーディネーターの業務課題がどのように変容するのかについて量的検討と質的検討を通して明らかにするとともに、コーディネーターの専任化に伴うメリットとデメリットの両面について検討することであった。 平成30年度は、公立の幼稚園(251園)、小学校(249校)、中学校(251校)、高等学校(249校)の計1000校のコーディネーター1000名を対象に昨年度行った調査の質的分析を進めた。回答者のうち専任のコーディネーター(学級担任や通級担当と兼任していない者)を抽出し、コーディネーター自身が専任化の効果や課題をどのように感じているかについて計量テキスト分析を行った。分析の結果、専任のコーディネーターは、コーディネーターの専任化について概ね肯定的に捉えており、子どもの実態把握や校内研修の企画・運営、校外の関係機関との連携といった業務を行うための時間が確保できるという点にメリットを感じていることが示された。一方で、授業を行うことは教師としてのやりがいにも直結しており、実態把握や教職員との連携を充実させるためにも学級や教科を担任する必要があるという意見も見られた。また、専任化によりコーディネーターに負担が集中してしまう可能性もあり、専任化よりも支援に関わる人員の増加を求める意見も出た。こうしたことから、コーディネーターがその業務を十分に遂行し、我が国におけるコーディネーター制度を機能させるためには、一律に学級担任や教科担任を外すのではなく、学校や地域、在籍する子ども、教職員の実態に応じて、例えば授業時数や校務分掌を減らしたり、コーディネーターを複数化して役割分担をしたりするなどの柔軟な対応が必要であることが示唆された。 なお、本調査の結果については、山口大学教育学部研究論叢(第68巻)に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、平成29年度に行った調査について量・質の両面からより詳細に分析することができた。さらに、量的分析の結果については日本特殊教育学会機関誌「特殊教育学研究」への掲載が決定し、質的分析の結果については山口大学教育学部研究論叢に掲載された。このように調査により得たデータを着実に分析し、広く公表することができた。 以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、コーディネーターの専任化に関するこれまでの調査結果をまとめるとともに、さらなる情報収集並びに今後のコーディネーターの在り方について考察するため、関連学会(日本特殊教育学会、日本LD学会、日本行動分析学会等)に参加したり、文献研究を行ったりする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、専任のコーディネーターにインタビュー調査を行う計画であったが、昨年度の質問紙調査において専任化に対する意見を自由記述により求めることで十分なテキストデータを得ることができた。そのため、訪問調査旅費等があまりかからなかったこと等が次年度使用が生じた理由として挙げられる。 平成31年度は、研究成果のまとめに向けた情報収集を積極的に行うため、できる限り多くの関連学会(日本特殊教育学会、日本LD学会、日本行動分析学会等)に参加する。また、これまでの分析結果から今後のコーディネーターの在り方について考察するための文献研究を行う。 以上のことより、平成31年度は主に学会発表・情報収集のための旅費や図書の購入費として予算を執行する予定である。
|