研究課題/領域番号 |
17K14073
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
藤井 翔太 北九州市立大学, 国際環境工学部, 研究員 (40794095)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 単分散自己集合体 / ヤヌス粒子 / 正多面体 |
研究実績の概要 |
本研究では、親水性金属ナノ粒子に疎水性ポリマー粒子を付加したダイマー型両親媒性ヤヌス粒子が形成するヤヌスミセルにおいて、その会合数とそのパッキング構造に分布や乱れがない、量子化された構造の創成を目指す。 ヤヌス粒子を創製する前段階として低分子系両親媒性化合物である強イオン性官能基を有するスルホナトカリクサレン系脂質の会合挙動について研究を行った。この脂質は、ヤヌス粒子のモデル分子となる。疎水性部位の体積が非常に小さいとき、プラトニックミセルとしては最小の会合数4の単分散テトラマーミセルを形成することを見出した。またこのミセルが強イオン性官能基を有していることから溶液の塩濃度によって敏感に形態変化が起き、会合数6のヘキサマーミセルへ変化することも明らかにした。この結果は、「soft matter」のバックカバーとして選出された。 また、このミセル系において疎水性部位の体積増加に伴い、非常に興味深い現象が観測された。通常のプラトニックミセルの会合数は正多面体の頂点数と一致するがこのミセル系では必ずしもその値と一致せず、疎水性部位の体積増加に伴い会合数17や24といったミセルを形成した。しかし、これら会合数もプラトニックミセル形成メカニズムで提案されている表面被覆率とミセル構造の熱力学的安定性との関係によって説明することができる。表面被覆率を考える際にクーロンポテンシャルを考慮した球面上の最密充填問題(トムソン問題)において、会合数17や24は被覆率が比較的高いことが示されている。つまり、スルホナトカリクサレン系ミセルのような強イオン性官能基をもつプラトニックミセルにおいてハードコアポテンシャルを考慮した球面最密充填問題(テーマス問題)ではなく、トムソン問題を考慮する必要があることが示唆された。この発見は、「Langmuir」へ報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究結果から、剛直な構造体であるスルホナトカリクサレン系ミセルも単分散ミセルを形成することを明らかにしてきた。またこのミセルの会合数は正多面体の頂点数と一致しないものであったが、ミセルの被覆率と熱力学的安定性の観点から説明できることが分かった。この概念を巨大粒子へと応用することでヤヌス系ミセル系におけるプラトニックミセル集合体の構築が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヤヌス系ミセルの足掛かりとして低分子化合物よりさらに巨大な高分子系ミセルにおけるプラトニックミセルを創製する。プラトニックミセルを形成するためには親水・疎水の界面面積を精密に制御する必要があり、従来の高分子系両親媒性化合物においてその精密制御は非常に困難である。そこで、ボトルブラシ状高分子を親水基として有する高分子系両親媒性化合物を合成し、そのブラシ鎖長を制御することで界面面積をコントロールする。得られる高分子系両親媒性化合物はまさにヤヌス系両親媒性化合物と同類のものであり、モデル巨大分子としてのその分子会合挙動を明らかにする。
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