本研究では、親水性金属ナノ粒子に疎水性ポリマー粒子を付加したダイマー型両親媒性ヤヌス粒子が形成するヤヌスミセルにおいて、その会合数とそのパッキング構造に分布や乱れがない、量子化された構造の創成を目指す。ヤヌス粒子を創製する前段階として低分子系両親媒性化合物であるカリクサレン系脂質の会合挙動について研究を行った。この脂質は、ヤヌス粒子のモデル分子となる。まず、非イオン性の親水性部位を付加したカリクサレン系脂質において、水溶液のpHや温度を制御することにより、ミセル会合数を精密に制御可能であることを示した。このとき、形成されるミセル構造はプラトニック(正多面体)構造と類似の構造であることを明らかにした。この研究成果は、「Journal of colloid and interface science」に掲載された。また、これまでの研究では両親媒性分子の親水性官能基の影響に着目してきたが、疎水性基のアルキル鎖長について詳しく検討した例がなかった。そこで、カチオン性カリクサレン系ミセルにおけるアルキル鎖長依存性について、詳細に検討した。興味深いことに、アルキル鎖長を少しずつ長くした際、ミセル構造はあるアルキル鎖長に達すると棒状へと変化した。しかし、ミセルが球状粒子を形成するアルキル鎖長では、そのミセル会合数は非常に小さく、どれも単分散性を示した。このとき、ミセル会合数は不連続に増加し、その会合数はプラトニック構造の形成を示唆したものであった。本研究成果は、「Langmuir」および「Soft Matter」のカバーとして選出された。
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