昨年度作製した、2量子ビット操作に適した構造を持つシリコン2重量子ドットデバイスの測定を引き続き行った。まず、各量子ドット中の電子スピンの1量子ビット操作(電場駆動単一電子スピン共鳴)の実験を行った。結果、それぞれのスピン量子ビットについて明瞭なラビ振動が得られた。 続いて、2つの量子ビット間の結合(スピン交換相互作用)の制御の実験を行った。スピン交換相互作用は、量子ドット間のトンネル結合を制御することができる。本実験では、20MHz程度と1量子ビットの位相緩和レート(0.5MHz程度)に比べて十分大きい値を得ることができた。 この交換相互作用下で1つの電子に対してスピン共鳴を行うことで、制御回転操作(CROT)を実装することができる。制御回転操作(CROT)操作を行い、そのラビ振動を観測したところ、理想的な減衰の小さい振動を確認することができた。これより高い精度でCNOT操作(半周期分のCROT操作)が実装できたと考えられる。CNOT操作の性能評価のため、2量子ビット最大もつれ状態(ベル状態)を生成し、その量子状態トモグラフィーを行った。結果、平均90%程度の忠実度が得られており、先行研究と比べても高い性能でCNOT操作が実装できていることが確認できた。 さらに、交換相互作用を交流変調することで可能であるSWAP操作の実装を行った。こちらについても、SWAP操作時間に対して明瞭な2スピン交換に相当するラビ振動が観測された。また、ランダム化ベンチマーキングを行い、99.6%の操作忠実度を得た。 SWAP操作の実装結果を論文としてまとめ、Physical Review Letter誌に掲載した。
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