本年度は、まず初めに外部核スピンとのNV中心とのコヒーレント結合を行う前のテストとして、NV中心に局在した電子スピンを用いた外部核スピン信号検出の高効率化を行った。ここでは昨年度の成果である、サブマイクロメートルサイズの微粒子をNV中心集団近傍に捕捉する機能を付与したダイヤモンド試料を用いて、磁気計測ならびに外部核スピン検出の実験を行った。その一連の成果として、上記の試料が量子センサーとして有用であることを示すだけでなく、量子センシングの基礎研究として、(1)量子センシングにおけるパルス幅の影響、(2)量子センシングを用いた交流磁場信号の位相に関する精密測定、(3)パルスシークエンスと非同期な交流磁場測定においてのパルス幅の影響について新たな知見を得たため、学会発表および論文として報告した。 昨年度の研究成果としてNV中心の量子化軸に平行に振動磁場を印加することで、核スピンとNV中心との間にパラメトリックな量子コヒーレント結合が実現され、そのコヒーレント結合によって核スピンとのもつれ状態の生成、コヒーレント結合と光励起を利用して核スピン状態を初期化できることを理論計算およびシミュレーションによって明らかにした。本年度は、上述のように量子センシング技術ならびに量子操作技術を洗練させた後に、窒素核スピンとのコヒーレント結合および外部核スピンとのコヒーレント結合について実験を進めたが、シミュレーションで示した性能に到達することは出来なかった。これは、マイクロ波印加方向を精密にNV中心に量子化軸に揃えたうえで、パラメトリック結合に必要なマイクロ波パワーを印加することができなかったのが原因であることが、本年度、研究を進めてわかってきた。本研究提案での目標達成にはマイクロ波照射の方向制御技術に関して研究を進め、より優れた量子制御マイクロ波アンテナを構築する必要があると考えている。
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