本助成費で「フェムト秒超解像顕微過渡吸収測定装置の開発と有機薄膜太陽電池系への応用」の研究を行った。 測定試料の選定のため、いくつかの半導体微粒子試料系にて測定を行い、その結果、比較的信号強度の強いCH3NH3PbBr3微粒子系では、研究成果論文に示すように顕微鏡下で単一微粒子においても信号が検出可能であった。その後、位相変調器を導入し、顕微鏡下における光ポンプ・プローブ法を用いて、構造化照明法を導入し、その空間分解能の向上を目指した。超解像用の空間位相変調器を用いて、励起光の位相変調までは行えたが、信号のS/N比の問題で、過渡吸収信号の超解像技術までには及んでいない。 S/N比向上の方針として、現在の問題点としては、 ①検出器の暗電流の大きさ。信号に対して暗電流が100分の1程度あるため、この暗電流を除く必要がある。対応として今後はさらに高感度の検出器を導入し、信号のS/N比を向上させていく。 ②測定時間の短縮化。測定時間が長くなるにつれ、本実験手法では、複数枚の画像データを取得し、その後その画像データから回折限界を超えた超解像画像を取得する。現在の1枚の画像取得に要する時間が1分程度であるが、その間に励起光の揺らぎなどがあるため、高速でデータ取得する必要がある。対応としては、さらに高速にデータを読み込み可能な検出器を用いて、光源の揺らぎを抑制する。 今後はこれらの点を改善し、微小領域における光化学反応ダイナミクスの解明へと応用していく予定である。
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