カーボンナノチューブ(CNT)などのナノ材料の熱物性計測と界面におけるフォノン散乱機構による熱整流作用に関して研究を進めた。まず始めにCNTの熱物性を計測するためのデバイス作製に取り組んだ。浮遊触媒気相成長法に熱勾配を与えた流路を組み合わせることで、Si基板上に単層CNTを効率よく堆積させる手法を確立した。Si基板上に堆積させたCNTの原子間力顕微鏡像から数ミクロン程度の長さに渡って、孤立したCNTを成長できていることを確認した。またEBリソグラフィなどのデバイス作製プロセスを駆使することで、CNTの直上に正確に電極を形成するための手法を構築できた。電気的特性評価結果から、金属的特性を示すCNTとP型の半導体的特性を示すCNTを含んだデバイスを作製できた。その後CNTと電極下部の酸化膜をBHF溶液でエッチングしたところ、エッチング後に電極が剥がれてしまう問題が発生したが、デバイス作製条件を検討した結果、CNT成長段階で基板が汚れたことによる電極とSi基板の密着性が原因であるとの結論に達した。また白金ホットフィルムが静電気により実験中に断線する問題点については、静電気対策を施すことでデバイスへの過電流を防ぐ実験系を構築した。熱物性評価手法として、試料に交流電流を印加した際の電圧変動成分から試料の熱伝導率計測手法を構築した。またシミュレーションに関して、分子動力学シミュレーター(LAMMPS)の環境構築を行い、欠陥の有無を考慮したグラフェンに関するシミュレーションを行い、計算の妥当性を確認できた。
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