研究課題
本研究は、遷移金属カルコゲナイドナノチューブ(TMDC-NT)の構造制御技術の開発により均一かつ1次元性の高い(小直径かつ層数の少ない)TMDC材料を創出し、構造制御された1次元TMDC試料を用いてバルクや2次元系には無いユニークな機能を開拓することを目的としている。これまで市販のTMDC-NTを用いて物性研究を行ってきたが、市販試料には構造の不均一性の問題があり、特に大直径の試料の存在により、1次元化による機能向上は見出されていない。平成30年度は、本研究の最重要課題であるTMDC-NTの1次元性の向上、さらには得られた試料の機能開拓を目標とし、以下の研究を行った。まず、前年度開発したTMDC-NTの1つである二硫化タングステンナノチューブ(WS2-NT)の合成法の最適化を行った。硫黄供給を昇温後に固定し、構造変化を伴わない800度以下で硫化することによって、これまで問題となっていた試料のばらつきや構造変化を抑え、均一な試料の合成に成功した。平均直径20nm、平均層数9の試料が得られ、市販試料(平均直径120nm、平均層数30以上)に比べて、試料構造の大幅な低次元化に成功している。また、本手法を適用し、二セレン化タングステンナノチューブ(WSe2-NT)等、他のTMDC-NTの合成も可能であることを初めて見出した。さらに、トランジスタ構造により得られた試料の電気伝導特性を評価した。オンオフ比3桁以上の明確なトランジスタ動作を観測した。市販試料とは異なり、キャリアとしてホールのみが伝導するP型駆動を示した。この要因の一つとして、ナノチューブ内部空間に存在する酸化物の影響が挙げられる。合成試料では、市販試料と比べて層数が少ないため、ナノチューブ外壁の伝導層がナノチューブ内部の影響を強く受けると考えられ、今後内部空間を用いたキャリアドーピング等への展開が期待される。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 1件)
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