研究課題/領域番号 |
17K14100
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
菅 洋志 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60513801)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 不揮発性記憶素子 / ナノギャップ素子 / NEMS |
研究実績の概要 |
ナノギャップNEMS(2元素ナノギャップ)構造を検討し、素子作製および、その評価を行った。高温環境における原子拡散を抑制する目的で、金属下地膜を備えたナノギャップNEMS(2元素ナノギャップ)構造を新たに開発し、その効果を評価した。700℃超の高温環境において、従来のナノギャップ素子はリーク電流を伴い、不揮発性記憶素子としての機能を喪失するのに対して、新たに開発したナノギャップNEMS構造は、下地金属膜の効果によりリーク電流を抑制し、900℃超の温度環境でも不揮発性記憶素子としての機能を維持した。スイッチング、リテンションの評価において、機能を確認した。また、温度に極めて強い炭素系ナノ材料を用いたナノギャップ素子を考案し、たとえばフラーレンのロッドなどを用いたナノ電極作製を試みた。 メカニズム解明に必要な観察技術について研究を行った。ナノギャップNEMS素子の高分解能観察のためには、電子線が透過する薄片試料が必要となる。50 nm程度の電子透過膜にナノギャップNEMSを形成することは、リソグラフィー行程で透過膜が破損するため困難である。本研究では、ナノギャップ素子を作製後にシリコン酸化膜基板の素子直下裏側を反応性イオンエッチングにて深掘りし、100 nm程度のシリコン酸化膜を残すことで作製する方法と、申請者らが開発したプラズマ加工技術を用いた裏面シリコン層除去法により作成することを試みている。しかし、試料作成の歩留まりが低いことが問題だったため、新たに、大量かつ短時間でナノギャップ作製するための、光ナノインプリント法によるナノギャップ電極作成技術を確立し、素子作製および、素子の特性評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属膜を備えたナノギャップNEMS(2元素ナノギャップ)構造を考案した。その特性を調べ、従来ナノギャップ素子に比べて、高温でのリーク電流が少ないことを確かめた。従来ナノギャップ構造は、700℃超高温環境で発生するリーク電流のため、不揮発性素子の機能が失われていたが、ナノギャップNEMS構造は下地金属膜の効果により900℃超の温度環境でも不揮発性記憶素子としての機能を維持した。スイッチング、リテンションの評価において、機能を確認できたことから、ナノギャップNEMS(2元素ナノギャップ)構造の研究についても、おおむね順調に進展している。 当初計画していた作製技術は、蒸着中電圧印加法、あるいは、電子ビーム誘起デポジション法を利用した製作技術を検討していたが、試料作製の所要時間が長く、研究進捗の障害になっていた。本年度、光ナノインプリント法によるナノギャップ電極作製技術を新たに開発したことで、高分解能観察用のナノギャップNEMS素子を極めて簡便に製作できるようになり、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
ナノギャップNEMS(2元素ナノギャップ)の新たな構造を検討する。また、多様な電極材料についても検討する。特に、フラーレンやグラフェンなどの炭素系ナノ材料を用いたナノギャップ素子などを中心に検討する。高温耐性の向上や切り替え電圧低減を目指す。 ナノギャップNEMS(2元素ナノギャップ)構造の動作メカニズム解明について研究を継続する。必要な高分解能観察用素子製作、ナノギャップ観察のための顕微鏡技術について研究を推進する。電圧印加ノイズの低減技術、精密微動機構などを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アクチュエータ部品など、電子顕微鏡用の部品のいくつかについて、製造が年度内に間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。平成30年度に購入する。
|