研究実績の概要 |
<具体的内容> 磁場敏感な誘電異常を示す電荷整列系マンガン酸化物Ca(Mn,Sb)O3について、誘電異常温度への化学・物理圧力効果を調べた。化学圧力効果としてはCaサイトへの等価数Sr部分置換を行って、誘電率の温度依存性を測定した。物理圧力効果の研究では、圧力下・低温・磁場中での誘電率測定用にプローブや圧力セルを新たに設計・製作して測定を行った。化学圧力効果と物理圧力効果は類似の傾向を示し、トレランスファクターと誘電特性の相関が示唆されることから、今後の物質設計の指針が得られた。 また、Ca(Mn,Sb)O3の単結晶を共同研究者に育成していただき、単結晶試料の誘電率の挙動を多結晶のものと比較した。これは(Ca,Sr)(Mn,Sb)O3系の磁気誘電効果の発現箇所として、物質内部と物質界面という2つの可能性が考えられたからである。粒界を持たない単結晶においても多結晶と同程度の磁気誘電効果を観測したことから、(Ca,Sr)(Mn,Sb)O3系の磁気誘電効果の発現箇所は物質内部であることを明らかにできた。 さらに、誘電率の周波数依存性の測定から(Ca,Sr)(Mn,Sb)O3の誘電特性がグラス的であることも見出した。
<意義・重要性> 元素置換によって最高で170 Kもの高温において磁気誘電効果を誘起できたのみならず、その起源を探ることで今後より高機能な新物質を開拓するための方策も提案できた。従って、本研究はマルチフェロイクスの実用化を加速できたという意義を持つ。
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