研究課題
本研究の目的は、近接効果およびスピン注入によりクーパー対のシングレット状態からトリプレット状態への変換を促し、それによるスピン偏極超伝導電流を実現することである。そのうち当該年度は、昨年度から引き続き、イギリスのグループとの共同研究を推進することにより、スピン軌道相互作用と交換相互作用によるスピン偏極超伝導電流の生成と検出を行った。具体的には、超伝導体を含む多層膜に対してスピン注入を行い、スピン軌道相互作用や交換相互作用の近接効果の有無によるスピン信号の変化を測定し、その検出方法の有効性について示した。その他、研究期間全体を通じて、以下のような成果を挙げた。(1) 複数の強磁性体ドットを用いてその磁化配列を制御することにより、スピン注入によって超伝導近接効果が抑制される様子を電気的に測定することに成功した。(2) 高スピン偏極材料であるCoFeAlを用いて作製したナノピラーとより高い超伝導転移温度を有するNbNを用いることで、超伝導体と金属の界面における超伝導ギャップ形成の温度依存性やそれに対するスピン吸収の現象論的モデルを構築した。(3) 強いスピン軌道相互作用と交換相互作用の近接効果下にある超伝導体に対してスピン注入を行い、スピン偏極超伝導電流の検出にスピン吸収が有効であることを示した。(4) 理論グループと積極的な議論を行うことにより、非磁性体中に形成された磁性体クラスタへのスピン注入による制御方法や、スピングラス状態を用いたスピンバルブ構造による超伝導電流のスピン偏極率測定など、今後の超伝導スピントロニクス分野拡大に向けた着想を得られた。これらの成果は、査読付き論文に掲載済みもしくは投稿に向けて執筆中である。また、招待講演を含めて研究会等における発表も行った。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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