研究実績の概要 |
次世代の高周波パワーデバイス応用を目指し、窒化アルミニウム(AlN)層を基礎としたトランジスタの作製とAlN層の接触抵抗低減に関する研究を行った。得られた結果は以下の通りである。 (1)有機金属気相成長法を用いた窒素極性面AlNの高品質結晶成長((002)対称面XRC半値幅:203",(102)非対称面XRC半値幅:389")に成功した。高温かつ高V/III比で結晶成長することで、結晶品質が向上することが分かった。一方で、1100度以上の高温成長時、不純物Siが意図せずに混入し、AlN層が導電性を示した。SiC基板のオフ角度を低く抑えることで、ステップバンチングを抑制し、表面荒れが小さくなった。 (2)高Al組成AlGaN分極効果トランジスタに世界で初めて成功した。AlN層のエッチング条件を最適化し、286 nm/minのエッチング速度が得られた。ソース/ドレイン電極下をエッチングすることで接触抵抗を低下させ、100 mA/mmを超えるドレイン電流を得た。これは高Al組成AlGaNトランジスタの動作電流として世界最高値である。 (3)AlNチャネル素子の比較のため、酸化物半導体(AlGa)2O3をチャネルとした電界効果トランジスタを作製し、世界初動作に成功した。Al組成15%(AlGa)2O3チャネル層を用いた場合、絶縁破壊電圧は900 Vであった。これはAlNトランジスタと比較するとやや小さい。更なる高耐圧化には、結晶性の改善およびAl組成の向上が求められる。
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