研究課題/領域番号 |
17K14111
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
宮川 鈴衣奈 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10635197)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザー / レーザープロセッシング |
研究実績の概要 |
フェムト秒レーザーを半導体や金属に照射することで,照射したレーザーの波長より短い周期の周期構造(LIPSS)が形成されることが知られている.本研究は,LIPSS形成をダイナミクスとして把握することによるフェムト秒レベルでの光と物質との相互作用の理解と,その機能的応用を目的としている. 平成29年度は,LIPSS形成におけるレーザーの照射ショット数を変化させ,それらが構造形成に与える影響を調べた.また,構造の結晶状態をTEMにより観察し,被照射材料の違いを調べた. Si基板の同位置にレーザー照射するショット数を変化させ,その影響を調べた.隣接する互いの照射位置を十分に離した場合(同位置には1ショット照射),周期構造は形成せずビーム径と同程度の約15um径の円状のアブレーション痕を形成した.隣り合う照射位置が約2um重なるように照射した場合(約15umビーム径のうち約2umは同位置に2ショット積重照射),約15umの照射領域全てに約1um周期の周期構造を形成した.さらに,同位置に200ショット以上の積重照射をしたところ,約500nm周期の周期構造を形成した.この結果は,低積重照射では波長と同程度の周期構造を,多重積重照射では波長の半分以下の周期構造を形成するという従来の報告に従っている.低積重照射において,照射領域全面でなくとも一部領域が積重照射されると周期構造を形成する点が今回新たに明らかになった. SiC,Si,サファイアに形成したLIPSSの結晶状態をTEMで調べたところ,SiCは基板と同等の結晶状態を維持しているのに対し,Siでは数10nmのナノ粒子の集合体である多結晶状態に,サファイアでは結晶性は維持しているものの高密度の転位が形成された.これらの結晶状態の違いが何に起因しているのか,詳細を明らかにしていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の計画通り,フェムト秒レーザー発振器にパルスピッカーシステムを導入し,外部制御によるパルスの自在制御を可能にした.ただし,パルスピッカーシステムによるパルスの間引きと繰り返し周波数変更により出力できる最大平均光強度が低下したため,本来計画していたSiCへのLIPSS形成に十分な光強度が得られなくなった.そこで,SiCより加工閾値フルエンスの低いSiへのLIPSS形成における照射ショット数変化の影響を調べ,その効果を明らかにした.今後は光学系の工夫によりSiCを中心としたワイドギャップ材料でもパルス制御加工ができるように努める.また,平成30年度以降に実施予定であったTEMによるLIPSSの結晶状態評価を平成29年度に取り組み始めたため,当初の計画より進展して進められている.
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今後の研究の推進方策 |
光学系の改善により,加工閾値フルエンスが高いSiCを中心とした難加工材料へのレーザーパルスの自在制御を可能にする.LIPSS及びレーザー照射領域の結晶状態をTEMやXPSなど多種の高感度な評価手法により把握し,レーザーパルスの積重や材料の違いによる得強を詳細に調べる.また,レーザー誘起構造を機能的に応用させるため,構造を形成した結晶基板上へのホモ・ヘテロエピタキシャル成長を行い,その効果を調べる.
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