研究実績の概要 |
平成29年度は,鉄鋼材料中に含まれる元素であるAl, Si, Fe, Cr, Tiの酸化物及び窒化物に着目し,13種類のセラミックス材料を取り扱った.これらのセラミックス材料における水素の侵入特性に関して研究を行った.まず,原子空孔や置換元素を含まないバルク材料中での水素の最安定な吸着構造を決定した.得られた吸着構造における電子状態の解析から,典型元素(Al,Si)の酸化物及び窒化物中では水素とバルク材料間に結合を形成しづらく,水素が固溶しづらいことを明らかにした.一方,遷移金属(Fe, Cr, Ti) の酸化物及び窒化物中では水素とバルク材料間に結合が形成され,典型元素の系と比較し水素が固溶しやすいことを明らかにした.このとき水素原子は,酸化物中ではOと共有結合を,窒化物中ではバルク材料から電子を受け取り負に帯電し,水素原子の周囲に存在するカチオンと静電相互作用による結合を形成する傾向があることを明らかにした.また,多くのセラミックス材料において原子空孔やカチオンサイトもしくはアニオンサイトに置換元素が存在する場合,余剰電子や正孔が導入され,これらの影響により水素とバルク材料間に結合が形成されやすくなることを明らかにした.ここから,水素原子の固溶特性の原子空孔及び置換元素依存性を系統的に明らかにした.さらに,バルク材料に加え,窒化チタンのナノ界面中における水素原子の吸着状態や拡散特性も調査し,ナノ構造の影響を明らかにした.加えて,水素遮蔽膜として有望な層状セラミックス材料であるMXeneの触媒担体としての応用の可能性も検討した. これらの成果を3報の査読付き原著論文,2件の国際会議,及び7件の国内会議にて発表し,うち1件は依頼講演である.
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