研究実績の概要 |
平成30年度は,前年度に引き続き鉄鋼材料中に含まれる元素であるAl, Si, Fe, Cr, Tiの酸化物及び窒化物に着目して研究を行った.このとき,考慮する組成を増やし,14種類のセラミックス材料を取り扱った.今年度は元素置換が導入されたセラミックス材料中での水素の固溶状態に関して詳細な電子状態解析を行い,水素固溶エネルギーにおける置換前後の元素種依存性の起源を明らかにした.これらの結果を系統的に整理し,欠陥導入による材料劣化への耐性までを考慮し水素遮蔽膜として望ましいセラミックス材料を同定し,水素遮蔽膜材料設計の指針を構築した.得られた元素置換セラミックスの電子状態から炭素や酸素が置換された窒化アルミニウムの光学特性が変化することも明らかにした.また,機械材料や保護被膜として着目されているMAX相セラミックスの保護被膜や水素環境下での触媒担体としての応用可能性を調査するため,それらの単原子層であるTi, Cr, V系のMXene上での触媒金属と水素の吸着状態を明らかにした.加えて,前年度までに高速ヒドリド伝導の実現が可能であり,水素分離膜として応用が可能であることが見出された窒化チタンナノ結晶膜に着目し,様々な界面構造を有する窒化チタンナノ結晶の界面中での水素拡散特性を調査した.その結果,特定の界面構造が形成された場合に水素の拡散障壁が著しく低下することを明らかにした.得られた知見から,水素拡散の高速化を実現するための界面設計指針を構築した. これらの成果を2報の学術論文,2件の国際会議,及び7件の国内会議にて発表し,うち1件は招待講演である.
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