研究課題
磁気ダイナミクスの観察に向けたパルス電子線を用いた時間分解イメージングの確立のために、最終年度は主に1)パルス電子線およびダイレクト電子検出器をもいたシングルショットイメージング、2)高速電子線偏向器の開発と電子顕微鏡への搭載、3)パルス電子線列の生成と高速イメージングへの応用、に取り組んだ。1)に関しては、まず昨年度までに構築した高強度パルス光生成機構を用いてサブマイクロ秒でのパルス電子線の発生に成功した。また、昨年度に構築したパルス電子線とダイレクト電子検出器の同期機構を用いて、パルス電子線幅と検出器の露光時間を一致させた同期検出を実現した。パルス電子線をダイレクト電子検出器により像撮影を行いその信号対雑音比(SNR)を求めた。55nm/pixelの倍率においてパルス幅1μsでRoseの条件(SNR>5)を満たし、サブマイクロ秒でシングルショットイメージングが行えることがわかった。次に2)について取り組み、これまで開発してきた高速電子線偏向器の改良・最適化を行い、透過電子顕微鏡への搭載に成功した。具体的には電極形状の改良・最適化したことにより電極を保持する絶縁体へのチャージアップを低減させた。また高電圧パルス印可機構を構築し、サブマイクロ秒で高電圧パルスの印可が可能となった。さらに開発した偏向器の電子線偏向量の印加電圧依存性をしらべ、偏向量が30keVの電子線に対して0.033mm/Vであり当初の見積もり通り動作することがわかった。3)では、上記の2つの開発を組み合わせパルス幅が500nsの2つのパルス電子線を500 nsの間隔で高速電子線偏向器に入射させ、それと同時にパルス電圧印可し検出器面上で2つのパルス電子線を分離した。その結果、500nsでの間隔で連続したシングルショット像の取得に成功した。これにより高速電子線偏向器を用いたシングルショット法による連続時間分解撮影の手法を確立できた。
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Physical Review Letters
巻: 123 ページ: 137203
10.1103/PhysRevLett.123.137203