プラズモン微小共振器へのエネルギー移動を介することによって蛍光物質の発光性緩和がどのように高速化されるか微視的に明らかにするために、電子線顕微分光測定を可能とする薄膜蛍光材料を内包するプラズモン微小共振器を検討した。プラズモン微小共振器をプラズモニック結晶内に形成するために、フルバンドギャップを有するプラズモニック結晶について電子エネルギー損失分光(EELS)を用いて調査し、フルバンドギャップを有する三角格子構造におけるバンド端定在波モードの同定ならびにその状態密度の可視化がEELSで可能であることを見出した。また結晶中に導入された格子欠陥が微小共振器として機能することもEELSによる状態密度マッピングによって明らかとなった。 上記格子欠陥を利用したプラズモン微小共振器による蛍光材料の緩和促進をカソードルミネセンスによって微視的に分析するために、蛍光薄膜を組み込むことが可能な金属ナノディスク配列-誘電体平坦膜-金属平坦膜の三層を有するプラズモニック結晶の作製と特性解析を実施した。角度分解カソードルミネセンスによるバンド端状態密度マッピングの結果、誘電体平坦膜層がない従来の構造と同様の対称性を持つバンド端モードが形成されることが明らかとなった。一方、従来構造との相違点として、格子により形成される伝播型のBlochモードと金属ナノディスク単体に局在するプラズモンモードとの混成がバンド構造を特徴づけることも明らかとなり、誘電体薄膜を内包したプラズモニック結晶における局所状態密度の構造パラメータによる制御が可能となった。 以上の成果により、プラズモン微小共振器へのエネルギー移動を介した発光性緩和高速化の局所分光分析の基盤が構築された。今後同現象の微視的メカニズムの解明のための系統的研究を展開していく。
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