生体内の生体機能や形態を再現できる組織モデル(培養細胞を生体組織のように3次元配置したもの)の作製技術が急速に進歩しており、この技術により多くのコストと時間を要する動物実験を行わずに薬剤動態試験などが可能になるため、今後の生命科学、再生医療や創薬研究の基盤技術になると期待されている。本研究の目的は、生体深部構造と分子情報を計測する無標識イメージング技術の開発である。本研究では、生体透過性が高い波長1700 nm帯を利用することで、無標識生体深部イメージングの実現を目指した。近赤外光を用いた場合、観察深度を制限している主要因は試料中の散乱と水の吸収による光減衰である。波長1700 nm帯は光散乱係数が小さく、水の吸収が比較的低いため、生体透過性の高い波長帯として注目されている。本研究では、生体無標識イメージング技術用に、申請者が開発した波長1600 nm帯モード同期超短パルスファイバーレーザー光源を利用し、波長1700 nm帯無標識イメージング技術用光源を開発した。そして、開発した波長1700 nm帯光源を用いたスペクトル領域光コヒーレンス顕微鏡を開発し、マウス脳や豚甲状腺などの生体試料観察において試料表層から1.5 um以上深部を3 um程度の高い空間分解能で可視化できることを実証した。また、開発した超短パルス光源を用いた非線形ラマン散乱信号計測装置を開発し、試料の信号計測が出来ることを確認した。これらの研究成果において生体深部の構造と分子情報を計測できる見通しを得ることが出来た。
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