研究課題/領域番号 |
17K14128
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
森竹 勇斗 東京工業大学, 理学院, 助教 (50783049)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタマテリアル / プラズモニクス / ファノ共鳴 |
研究実績の概要 |
本年度は、「円形構造からなるADBメタマテリアルの構造パラメータの最適化」に取り組んだ。まずシミュレーションにより、円形構造によるファノ共鳴特性を、構造パラメータを変化させながら系統的に調査した。その結果、円形構造の場合でもファノ共鳴が発現し、そのQ値がバー構造と比べた場合に大きく低下しないことがわかった。一方、構造周期を大きくした場合には、ファノ共鳴が消失してしまったため、ファノ共鳴の発現にはある程度の密度が必要であることがわかった。また、微細加工技術及び赤外分光測定を用いた実験により、円形構造によるファノ共鳴の観測に成功した。これらを踏まえ、2年目で作製予定の金ナノ粒子を想定し、球形構造でのシミュレーションを行ったところ、球形構造ではファノ共鳴が発現しないことがわかった。これは、球形構造におけるプラズモン共鳴の共鳴スペクトル幅が広すぎるためであると考えている。そこで、金ナノ粒子ではなく金ナノロッドによる代替を検討するため、実際に市販されている金ナノロッドの形状を用いたシミュレーションを行った。その結果、ロッド構造ではファノ共鳴が発現することを確かめられた。以上から、2年目のデバイス作製では金ナノロッドを用いる必要があることがわかった。一方、MEMSデバイスを用いた、ファノ共鳴の動的変化の観測結果から、本研究で着目しているファノ共鳴が金属構造間のコヒーレンスに依存していることが示唆された。これは、ファノ共鳴の存在条件を考える上で重要な結果である。また、構造を支える基板が、共鳴特性に影響を与えることが知られているため、基板がQ値に与える影響について、シミュレーション・実験の両面から調査を行った。その結果、基板の屈折率や基板との距離によってQ値が低下することがわかった。そのため、高Q値のためには石英などのできるだけ低屈折率な基板を使用する必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、シミュレーションと実験の両面から、円形構造におけるファノ共鳴の観測とその特性制御に成功した。また、ある程度の密度が必要なこと、ファノ共鳴の発現には球形ではなくロッド形が必要なことなどの2年目のデバイス構造設計指針を得ることができた。さらに、基板がファノ共鳴特性にあたえる影響についても調査を行い、構造周辺の電磁場分布とQ値の低下に関する知見を得た。構造が周期的ではなくランダムに並んだ場合の検討はできておらず、ファノ共鳴Q値と構造パラメータとの関係の全容が明らかになったわけではないものの、デバイス設計の重要な部分に関する最適化指針を得ることができた。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、1年目で得られた設計指針をもとに、「金属ナノ粒子作製方法の開発と塗布技術の確立」に取り組む。1年目の検討から、ナノ粒子ではなくナノロッドを使用する必要があることがわかったため、当初予定していた化学的手法による金ナノ粒子の合成は行わず、市販の金属ナノロッドを購入して使用する。それらの金ナノロッドの塗布技術の開発に注力するとともに、ランダムに配列された系におけるシミュレーションを行い、実験とシミュレーションの両面から研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は2017年10月に、理化学研究所から東京工業大学に異動した。そこで研究計画の調整、見直しが必要となった。当初、実験に必要な物品を1年目に購入予定であったが、それを2年目に購入することとしたため、次年度使用額が生じた。2年目では、実験等に必要な物品を購入し、光学測定系等を立ち上げる予定である。
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