研究課題/領域番号 |
17K14136
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
望月 出海 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (30579058)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 低速陽電子 / 全反射高速陽電子回折 / 最表面構造解析 / 金属酸化物触媒 / チタニア |
研究実績の概要 |
当該年度は、反射高速電子回折(RHEED)の陽電子版である全反射高速陽電子回折(TRHEPD、トレプト)の最表面敏感性をフルに生かして、表面構造を最表面から下層まで順々に決定することができる「方位角プロット法」の手法開発を進めた。 ここでは既存の試料マニピュレータを用いて絶縁体試料の電子衝撃加熱を行えるようにするため、高圧フローティング電源と温度コントローラを購入した。またデータ取得効率向上のため試料ホルダ形状を改良した。この結果、実験装置内でin-situにてルチル型TiO2(110)試料表面の清浄化を簡便に行うことができるようになり、加えて視射角を固定して方位角を変化させつつデータ取得する方位角プロット法の実験を不備なく行うことができるようになった。さらに、1回のTRHEPD実験で方位角の広範囲(φ=±30度以上)を測定できるようになり、試料基板の毎回の交換が必要なくなったことにより、実験データ取得の効率が飛躍的に向上した。 新しい構造解析法の確立に関しては、当該年度の計画通り、解析ノウハウが十分にあるルチル型TiO2(110)(1×1)表面の解析を試み、従来の構造モデルをもちいた再現計算との比較により、取得した方位角プロットを精度良く再現できることを確認した。これにより方位角プロット法をもちいて表面構造を最表面から下層まで一層ずつ順々に決定できることを実証した。これら成果について、物理学会・表面学会・陽電子科学会・放射線アイソトープ研究会、国際学会等で発表し、現在、成果をまとめて論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の計画通りに装置購入とホルダ改良を完了し、ルチル型TiO2(110)(1×1)表面からの方位角プロットのデータ取得と構造解析法の確立に成功した。また、次年度に計画していたアナターゼ型TiO2(001)(4×1)表面の実験データ取得と構造解析にも既に着手しており、次年度の計画を前倒して進めている状況にある。既に構造解析法の確立に関する成果も上がっており、早急に成果をまとめて公表する。
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今後の研究の推進方策 |
方位角プロット法をもちいて、構造未解明のアナターゼ型TiO2(001)(4×1)表面の構造解明を進める。既に実験データの一部取得に成功しており、今後もデータ取得を行うと共に解析を進める。本研究が不備なく進めば、この系は、光照射によって表面構造の変化も報告されており、そうした光機能特性の解明を目指した研究に展開したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料基板材料・消耗品の一部購入を次年度に持ち越したため、その購入に充てる。
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備考 |
International Symposium on Novel Energy Nanomaterials, Catalysts and Surfaces for Future Earthにおいて"NENCS Poster Award (General)"受賞
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