研究課題/領域番号 |
17K14139
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
片桐 健 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, 主任研究員(定常) (90510868)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ISOL / イオン源 / 重粒子線がん治療 / RIビーム |
研究実績の概要 |
陽電子放出核である11Cのイオンを加速器から供給し,重粒子線がん治療に用いることが出来れば,ポジトロン断層法によってリアルタイムに照射野を検証することが可能となる.このリアルタイム検証法が実現すれば,照射の高精度化により患者の負担は低減し,QOL(Quality of Life)は向上する.我々は11Cイオンの生成・加速技術の確立を目指して,11C化合物分子の高効率生成技術,不純物分子分離装置,同位体分離のための11C+生成用1価イオン源の開発を進めてきた.本課題では,これらの技術・装置から構成される11C+イオン生成システムの構築を進める.本研究の目的は,それを用いた11C+イオンビームのオンライン生成実験で11C+イオンの生成量・ビームの品質を明らかにし,11Cイオンの生成・加速技術の実現可能性を検証することである.平成29年度においては,1価イオン源の性能向上を目指して,PIC法を用いた粒子計算結果を元に改良を実施し,安定同位体の12Cガスを用いたイオン生成効率測定,エミッタンス測定等のビーム品質の調査を中心に進めた.これらの成果に関して,学会発表(2017年度加速器学会年会)や国際シンポジウム(Tsukuba Innovation Arena (TIA) Symposium: The Next Generation of Hadron Cancer Therapy and Its Beam Driver)にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度においては,これまでに開発した11C化合物分子生成分離装置(CMPS)と1価イオン源(SCIS)を統合させることで11C+イオン生成システムを構築し,12Cガスを用いて,イオン生成効率の測定,エミッタンス等のビーム品質の測定・評価を行った.また,平成30年度に実施する計画の11C+イオンのオンライン生成・定量化実験に備えて,放医研サイクロトロン施設のイオンビーム照射室の環境整備,及びプロトン照射用真空窓,ターゲットチェンバー,インターロック系等の実験装置系の設計/調達を順調に進めている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に構築した11C+イオン生成システムを放医研サイクロトロン施設イオンビーム照射室へと設置する.この11C+イオン生成システムと施設から供給されるプロトンビームにより,まず,真空照射ターゲット系の最適化・性能評価実験を実施する.本研究では,不純物の低減を狙って11C化合物分子の生成を真空中で行う.安定して効率よく11C化合物分子を生成するためには,プロトンビームの電流密度を下げることでこの熱損傷を防ぐ必要がある.そこで,ワブラー電磁石により照射野を拡大したプロトンビームを用いる.この拡大ビームを照射するためにターゲットステージの直径は30-40 mm程度とする.このターゲット系を用いて,ターゲット形状・ビーム形状・ワブリングパターン等の照射条件を最適にし,11C化合物分子生成量の増加とターゲットの長寿命化を目指す.この真空照射ターゲット系の最適化・性能評価実験の後に,最終目標である11C+イオンのオンライン生成・定量化実験を実施する.これらの結果から明らかになる,11C+イオンの生成量,11C+ビームの時間構造を元に,後段の荷電増幅器に要求される性能を検討し,11Cイオン生成ISOLシステムの実現可能性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
見積り価格と実際の物品購入価格に差が生じたために,余剰が生じた. この余剰金は,平成30年度に実施する実験に必要となるシステムの開発に用いる.
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