本研究により、数百μmのマイクロ流路上の局所領域に抗体を精度・再現性良く固定化し、生化学分析に応用可能な高度な検出技術への展開の可能性が示された。 最終年度においては、本課題で目的とする、PMMA基板への抗体固定化領域の設計指針の確立のため、レーザー改質領域と抗体の固定化能について評価を行った。実験の結果、PMMA基板上へのレーザー照射によって改質された領域では、基板表面の機械的・化学的な特性が変化していることを確認した。具体的には、①親水性官能基の増加、②微細溝構造による毛細管現象、③超親水性界面によるナノドロップレットの送液能を確認し、分析を行った。①の親水性表面については、XPS分析により評価したところ、親水性官能基が増加し、微細溝構造に液体が侵入されやすい状態を作り出してることを確認した。また、①親水性官能基の増加と②毛細管現象の効果により、超親水性の局所界面が創出され、③の送液能を生み出していることを確認した。さらに、レーザーの照射条件を調整させながら溝構造を作製することで、マイクロドロップレットに対する送液能力を自在に制御することに成功した。また、溝構造の送液能を活用し、液中に分散するマイクロビーズの分離実験を試み、溝構造を数μm~数十μmの幅に調整したところ、粒径ごとの分離が可能であることが分かった。 以上の結果から、本課題の目的は達成され、さらなる応用技術の展開の可能性が示された。
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