超伝導埋め込み配線と超伝導トンネル接合(STJ)を組み合わせたX線検出素子を開発した。サブum幅の超伝導埋め込み配線に電流を印加した状態においても、埋め込み配線上に作成された100um角のSTJで、リーク電流数nAの良好な電流電圧特性を得ることに成功した。更に、同一条件下で、X線照射を行ったところ、炭素および酸素のK線に対し、11eV程度のエネルギー分解能を実現した。このエネルギー分解能は、従来構造のNb/Alを用いたSTJと同程度であり、このような埋め込み配線のある3次元構造においても、非常に良い特性が得られるデバイス構造および作製手法の開発に成功した。 今回提案した構造(STJ1)と最高効率を実現しているシステム(X線キャピラリーレンズとSTJアレイX線検出器を組み合わせた構造(STJ2))の効率比較を実施した。1mm角のSTJを使用した場合、どちらも10 mSr程度の効率が実現可能である。これは、一般的な半導体X線検出器の1/10程度の効率である。更に、6.4mm角まで大規模な検出器構造を実現した場合、STJ1では、数100mSrの効率が実現出来、半導体X線検出器と同程度の効率となる。超伝導X線検出器は、半導体X線検出器の10倍程度のエネルギー分解能を有しており、実際の分析において、10倍以上の高速化や1/10以下の濃度の分析も可能になる。 そこで、STJを4096素子配置した有感面積6.4mm角の超伝導X線検出器を開発し、歩留まり91 %を実現した。現状、4096素子全ての素子を独立に読み出す構造は実現していないが、平成27年度から実施した科研費若手研究(B)(15K17495)で開発した超伝導TSVを組み合わせることで実現可能となる。今後、これまでに開発した様々な超伝導3次元実装・配線技術を用いて、究極の超高効率超伝導X線検出器を実現させる予定である。
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