研究課題/領域番号 |
17K14142
|
研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
亀島 敬 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 研究員 (50558046)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 空間分解能 / シンチレーター / X線 / セラミックス / 対物レンズ / 検出器 |
研究実績の概要 |
本研究では、レンズ結像型X線イメージング検出器の空間分解能を100 nm近くまで向上させることを目的とする。シンチレーターをレンズ形状に加工し対物レンズに組み込み、超高NAを持つ固浸対物レンズを開発する。これが実現すれば、放射光分野において共通計測技術であるX線検出器の基礎的な性能を既存限界ら一桁向上させることが出来る。平成30年度は、(i)固浸レンズのフォーカス合わせ構造の検討、(ii)固浸レンズ設計のためLuAG屈折率の測定、の2つを実施した。
(i) 固浸レンズの構造上、対物レンズ-シンチレーター間の距離を調整し、シンチレーター面にフォーカスを合わせることが出来ない。ゆえにフォーカス合わせの手法として、a:結像レンズ-イメージセンサー間の距離を調整するか、b:固浸対物レンズ内部に調整機構を搭載するかの2択となる。それぞれ、光学設計ソフトウェアで個体の温度を15℃と35℃に温度設定し結像性能を確認した。aは温度変化によるフォーカスドリフトが大きく、加えて光学性能が出ない事が分った。一方で、bは高い光学性能を発揮することに加え、先頭のシンチレーターレンズの形状誤差に対する性能劣化感度が小さいことが確認できた。これにより、対物レンズのフォーカス合わせはbを採用する事に決定した。
(ii) 対物レンズの設計には精度の高い素材の屈折率情報が必要である。シンチレーター材の屈折率を計測するには装置の都合上、8mm厚以上の試料が必要であった。しかし、8mm厚で透明化を行う条件が想定よりも厳しく、製造に難航している。令和元年に透明化を達成した後に、シンチレーターをプリズム加工し、その屈折率の測定を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はシンチレーターを対物レンズに組み込み目標の空間分解能を達成する。対物レンズの設計には精度の高い素材の屈折率情報が必要である。シンチレーター材の屈折率を計測するには装置の都合上、8mm厚以上の試料が必要であった。しかし、8mm厚で透明化を行う条件が想定よりも厳しく、製造に難航している。
|
今後の研究の推進方策 |
シンチレーター固浸対物レンズ構造による空間分解能向上の原理実証を最優先とする。今回使用しているシンチレーターはX線阻止能の高いLuAGを材料に使用している。これの透明化が達成できない場合は、X線阻止能は低いが透明化の条件が確立されているYAGに材料を切り替える。次回のプリズム形状シンチレーター試作はLuAGとYAGの両母材で用いることで、計画のバックアップを同時に実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
シンチレーターの透明化が完了後に、その屈折率測定のためシンチレーターをプリズム形状に加工する予定であった。その加工のための予算執行が遅れたため、次年度に予算を繰り越すこととなった。
|