研究課題/領域番号 |
17K14143
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
相島 健助 法政大学, 情報科学部, 准教授 (40609658)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数値解析 / 固有値問題 / データ駆動 |
研究実績の概要 |
現代の情報処理分野において,行列の固有値に関する数値計算アルゴリズムの重要性は言を俟たないであろう.現在,これらの線形代数的な数値計算の標準的アルゴリズムは,線形計算の世界標準ライブラリLAPACKやARPACKにも実装され幅広く利用されている.本研究では,これらに実装されているアルゴリズムの高速化を図るとともに,その高速化に関する知見を関連する諸問題に応用し,高速かつ高精度なアルゴリズムの開発を目指すものである.
本年度は,逆固有値問題に対してこれまでの研究を軸に数値計算法のサーベイを行い,本研究の位置づけを明確化した.逆固有値問題には様々な種類があり,本研究ではアファイン型の問題の数値計算について研究を行った.この種の問題に対する数値解法はニュートン法に基づくものが主であるが,本研究は通常のニュートン方程式を行列方程式に対して構築していくことに独創性がある.この方策が既存研究の中でどの程度新規性を有するかを明確化した.これにより逆固有値問題で表現できる数理モデルを明らかにしている.さらに,この知見を基に,近年データ駆動型計算手法として脚光を浴びている動的モード分解に対して本格的な理論研究に取り組んだ.現実的な問題設定における統計的な意味での漸近解析を行い,全最小二乗法を用いる動的モード分解の計算手法に対しては,漸近解析の意味で収束証明(一致性の証明)を与えた.そしてその収束速度の理論的評価を与え,本成果は国内の主要な研究集会にて発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
逆固有値問題および動的モード分解において当初の予定通り理論的な裏付けを達成できた.さらに,逆固有値問題のこれまでの研究の精査を行ったことで,低ランク行列に関する最適化問題と動的モード分解の関係が明らかになっており,引き続き応用上有用な数値計算技術の開発を実施し,その数学解析が見込める段階に入っている.
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今後の研究の推進方策 |
人工知能の理論基盤をなす機械学習アルゴリズムにおいて,線形代数に関する数値計算アルゴリズムは極めて重要であり,その観点から固有値問題とデータ駆動型計算手法に対するこれまでの理論的知見をもとに,さらにデータサイエンスにおける様々なアルゴリズムに対して理論研究・応用研究を推進していくことになる.
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19により予定していた国際会議および国内会議での発表を見送ることになった.今後オンライン以外で開催される可能性のある会議では旅費として使用することを予定する.さらに,当初の予定よりも逆固有値問題と動的モード分解の数理的な関係が明らかになっているため,その検証のための実験機器の購入が必要となる.
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