• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

格子欠陥ダイナミクスを利用した低次元ナノ炭素材料の自発曲率形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K14145
研究機関福井大学

研究代表者

LEI XIAOWEN  福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (50726148)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード格子欠陥 / 曲率 / 低次元炭素材料 / 回位 / 転位
研究実績の概要

三次元構造体で線欠陥として定義される転位や回位(転傾)では、欠陥の芯となる特異線の周囲に特異応力場が形成される。一方、二次元構造体に欠陥を導入すると、欠陥の周囲の応力場は曲率を変化させる駆動力として作用し、応力場の緩和と形状変化が生じる。このメカニズムを積極的に利用すれば低次元材料の形態制御が可能になると考えられる。本研究では、グラフェンシートやカーボンナノチューブなどの可展面に六員環の周期的配列が写像された低次元ナノ炭素構造体の完全結晶に、欠陥を導入することによって形成される面外変形メカニズムを自発曲率の変化として理解し、欠陥の生成・消滅および移動による面外変形の制御と、ナノ構造体の形態制御の設計原理の獲得を目的とする。
設備備品として低次元曲率構造造形装置を導入し、前年度の考案した連続体モデルを用いて、ナノ構造体と相似な力学特性を有するプロトタイプ造形した。応力フリーの状態で固有の曲率を有する薄肉構造体を実際に整形し、その実際の変形特性を助として飛び移りや屈服といった座屈を拡張した構造安定論(広義の座屈理論)による解析を連続体モデルベースで行った。まず軸対象の古典弾性論解析を基礎とし、さらに有限変形を考慮した解析を行った。得られた解析結果から複数の欠陥が弾性的に相互作用問題を考えた。線形論に基づく古典的な転位論ではこのような場は単なる重ね合わせによって評価できるが、低次元材料では面外変形によって、上に凸、下に凸といった解の唯一性が破綻するだけでなく、幾何学的な非線形性が本質的に重要になるためたんなる重ね合わせでは評価できない可能性があった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

有限変形を考慮した解析を行った。低次元材料では面外変形によって、上に凸、下に凸といった解の唯一性が破綻するだけでなく、幾何学的な非線形性が本質的に重要になるためたんなる重ね合わせでは評価できない可能性があった。日本機械学会計算力学講演会、M&M材料力学カンファレンス、the 9th Multiscale Materials Modeling (MMMM2018) に参加し、情報収集と成果発表を行った。

今後の研究の推進方策

欠陥の生成・消滅、移動によって、所定の欠陥配置を構成する可能性を調べ、ナノ機能曲面設計論の礎となる理論を構築する。すべりや上昇といった結晶学的な欠陥の移動がナノ炭素構造でも観察されているので、その欠陥の移動に伴う曲面構造の変化を原子シミュレーションによって解析する。さらに、欠陥の移動に必要な活性化エネルギーをNudged Elastic Band (NEB) 法を用いて評価する。すでにNEB 法を用いたアルゴリズムについては経験を有している。設備備品として導入する大容量構造データ記憶装置に、大量の基本解析データを保存し、欠陥の相互作用のポスト処理、可視化などのために用いる。生成・消滅・移動により動的に構成される欠陥配置を平成29年度の静的な結果と比較し、自発曲率に基づくナノ機能曲面設計論の礎となる理論を構築する。

次年度使用額が生じた理由

2017年度に妊娠・出産のために予定していた研究成果の国際会議と国内学会での発表を2018年度と2019年度に行うために未使用額としてが生じた。2019年度の使用計画は日本機械学会計算力学講演会、M&M 材料力学カンファレンス、オストラリアに開催する THE 13TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON THE MECHANICAL BEHAVIOUR OF MATERIALS (ICM13)国際会議に参加し、成果発表を行う。得られた成果は速やかに論文として投稿するとともに、最終年度の研究成果広報資料を作成する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] 西安交通大学/材料・環境力学実験室(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      西安交通大学/材料・環境力学実験室
  • [雑誌論文] A consistent methodology for optimal shape design of graphene sheets to maximize their fundamental frequencies considering topological defects2018

    • 著者名/発表者名
      Jin-Xing Shi, Keiichiro Ohmura, Masatoshi Shimoda, Xiao-Wen Lei
    • 雑誌名

      Journal of the Mechanics and Physics of Solids

      巻: 116 ページ: 117-134

    • DOI

      10.1016/j.jmps.2018.03.027

    • 査読あり
  • [学会発表] Disclination dipole model of kink deformation in layered solid2018

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Nakatani, Xiao-Wen Lei
    • 学会等名
      The 9th Multiscale Materials Modeling (MMM2018)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Elastic field of lattice defects in low-dimensional nano-carbon materials2018

    • 著者名/発表者名
      Xiao-Wen Lei, Akihiro Nakatani, Tomoya Taniguchi
    • 学会等名
      The 9th Multiscale Materials Modeling (MMM2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] Geometry of curved surface and energetics in graphene with defects2018

    • 著者名/発表者名
      Ako Kihara, Xiao-Wen Lei, Akihiro Nakatani
    • 学会等名
      The 9th Multiscale Materials Modeling (MMM2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] Kink deformation of layered solid surrounded by elastic media2018

    • 著者名/発表者名
      Xiao-Wen Lei, Akihiro Nakatani
    • 学会等名
      The 5th Asian Symposium on Material and Processing 2018(ASMP2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] ナノスケール質量センサーへの応用を目指したグラフェンシートの振動特性に関する分子動力学解析2018

    • 著者名/発表者名
      袋井賢、Xiao-Wen LEI、中谷彰宏
    • 学会等名
      日本機械学会第31回計算力学講演会(CMD2018)
  • [学会発表] 低次元ナノ炭素構造の格子欠陥に起因する曲面の幾何学とエネルギー論2018

    • 著者名/発表者名
      Xiao-Wen LEI、木原愛湖、中谷彰宏
    • 学会等名
      日本機械学会第31回計算力学講演会(CMD2018)
  • [学会発表] ナノ炭素材料の分子動力学解析と新しい複合材料の可能性2018

    • 著者名/発表者名
      Xiao-Wen LEI
    • 学会等名
      先端材料・技術入門講座2018(1)~福井大学における複合材料開発の研究動向~
    • 招待講演
  • [学会発表] 格子欠陥を考慮した低次元ナノ炭素材料の変形とエネルギーの解析2018

    • 著者名/発表者名
      Xiao-Wen LEI、木原愛湖、中谷彰宏
    • 学会等名
      日本機械学会M&M2018材料力学カンファレンス
  • [学会発表] ダイヤモンドナノスレッドを素線とする組紐カーボンファイバーの分子動力学解析2018

    • 著者名/発表者名
      藤林粋平、Xiao-Wen LEI、中谷彰宏
    • 学会等名
      日本機械学会M&M2018材料力学カンファレンス
  • [学会発表] 制御した格子欠陥を配置した積層グラフェンの変形解析2018

    • 著者名/発表者名
      清水俊吾、Xiao-Wen LEI、中谷彰宏
    • 学会等名
      日本機械学会M&M2018材料力学カンファレンス
  • [備考] 福井大学 学術研究院工学系機械工学講座 ナノ機能設計学 雷研究室

    • URL

      http://mech.u-fukui.ac.jp/~nano_lab/index.html

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi