2023年度の本研究では、これまでに開発した密度行列繰り込み群法を基本とする大規模並列計算に対応した強相関量子シミュレータの簡便にさまざまな模型に対応させるための拡張を行なった。2024年4月に運用開始されるNanoTerasu等の大型実験施設での実験の解析や今後の実験に向けた示唆を行うため、様々な系に簡便に対応できることは、今後の本分野における応用研究に利用するために非常に有益であると考えられる。これまで、フェルミオンの統計性より現れる演算子の交換関係を効率的に取り扱うため、各量子格子模型毎に場合分けした上で計算に必要な演算子の作成を行ってきた。特に、密度行列繰り込み群法では、この演算子を密度行列繰り込み群法において特異値分解に対応する基底変換と情報圧縮のため、数値的厳密な取り扱いと比較してその効率的な取り扱いは容易ではない。さらに、一次元系に向けた密度行列繰り込み群法を多次元系への拡張では、その困難がより顕著となる。本研究では、密度行列繰り込み群法のアルゴリズム上現れるシステムブロック、環境ブロックについて、その基底をアップスピン、ダウンスピンの電子数毎にブロック対角化し、その各ブロックに対応した電子数のみを記憶することで、様々な量子格子模型に対応することが可能になるよう、プログラムの改良を行なった。その結果、量子格子模型に依らず統一されたプログラムにより様々な量子格子模型に対応することが可能になったため、今後の応用における利便性、およびプログラムのメンテナンス性を向上させることに成功した。開発した強相関量子シミュレータは、スーパーコンピュータ「富岳」をはじめとした大規模計算機を用いた応用研究で利用され、その研究成果を論文や学会等で発表している。
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