最終年度においては、グラスマン多様体上の変形カイラル微分作用素の層について研究を行なった。具体的には、グラスマン多様体の箙多様体としてのハミルトン簡約による構成を元にBRST簡約によってグラスマン多様体上の変形カイラル微分作用素の層を構成できることを確認した。この構成を拡張することによって他のA型半旗多様体に対してもその上の変形カイラル微分作用素の層の構成が(そのような層が存在する場合には)可能であると期待できる。 また有木小池代数と呼ばれるヘッケ代数や、その準遺伝被覆となる有理チェレドニック代数に対して加群の誘導関手や制限関手の間のマッキー公式を証明した論文が学術雑誌に受理・掲載された。 本研究計画では平成29年度から令和2年度の期間において、シンプレクティック特異点解消のジェット束を量子化して得られる頂点代数に関する研究を行なった。特に、ハイパートーリック多様体と呼ばれるシンプレクティック特異点解消のクラスに対して、対応する頂点代数を構成し、その構造を研究した。これによって得られる頂点代数は特定のレベルにおけるA型のサブレギュラー冪零軌道に付随するアフィンW代数やA型の単純アフィン頂点代数を含む。その応用として、元良直輝氏との共同研究においてA型のサブレギュラー冪零軌道に付随するアフィンW代数の生成元を具体的に記述し、臨界レベルにおけるアダモビッチの予想を証明した。また、宮地兵衛氏・和田堅太郎氏との共同研究では、シンプレクティック特異点解消の量子化として得られる代数である有理チェレドニック代数に対して、その加群の制限関手・誘導関手の間のマッキー公式を証明するなど、関連する表現論に関しても精力的に研究を行なった。
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