研究課題
申請者は4年前から共同研究者と共に、ネフ接束を持つファノ多様体(以下、CP多様体)に関するCampana-Peternell予想(以下、CP予想)の研究に取り組んでいる。CP予想は森重文氏により解決されたHartshorne予想の一般化にあたり、申請者の専門である代数幾何学のみならず、複素幾何学、表現論など様々な分野にまたがった大きな未解決問題である。CP予想によりCP多様体は有理等質多様体であることが期待されている。CP予想に関連して、トレント大学のG. Occhetta氏とL. E. Sola Conde氏と共に、極小有理曲線の接方向により定まるVarietiy of Minimal Rational Tangents(以下、VMRT)の観点からF4(4)型の有理等質多様体の特徴付けを与えた。より具体的にはピカール数1のファノ多様体Xの任意の点におけるVMRTがF4(4)型の有理等質多様体のVMRTと等しいならば、XがF4(4)型の有理等質多様体と同型になることを示した。この結果を論文にまとめ、Mathematische Nachrichtenから出版されることが決定した。その後、より一般に、任意の点におけるVMRTが互いに射影同値であるファノ多様体の構造研究を行い、現在も継続している。また、CP予想に関連して、与えられた多様体XのX×Xにおける対角集合ΔがX上のサイクルとしてネフな多様体(以下、ネフ対角集合をもつ多様体)の構造研究を宇都宮大学の鈴木拓氏と行った。その結果、特にネフ対角集合をもつ超曲面の完全交差とデル・ペッツォ多様体の分類を得た。また、球多様体の場合も考察をし、その結果、中間サイクルに関するQ. Li 氏のある種の問題に対する否定的な答えを与えた。これらの結果をまとめ、現在学術雑誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
ピカール数1のファノ多様体Xの一般点におけるVMRTがピカール数1の有理等質多様体のVMRTと等しいならば、Xはその有理等質多様体と同型になることが、Mok氏、Hong氏、Hwang氏により予想されている(以下、MHH予想)。この予想はシンプレクティックグラスマン多様体と二つのF4型の有理等質多様体の場合を除いて正しいことが知られている。未解決の三つの場合に対して、MMH予想の弱型として、(一般点でなく)任意の点におけるVMRTが等しければ有理等質多様体を特徴付けられる、ということを示すことが申請書におけるH29年度とH30年度前半の目標であった。これに関しては、F4(4)型の有理等質多様体に対して、特徴付けを与えることに成功した。また、そこで用いた手法を応用することにより、H30年度に研究を予定していた任意の点におけるVMRTが互いに射影同値であるファノ多様体の構造研究を行うこともできた。こちらに関しては大きな結果を得るには至っていないが、概ね順調に研究は進んでいる。
上記、MHH予想の弱型の未解決な箇所、一般のMHH予想、任意の点におけるVMRTが互いに射影同値であるファノ多様体の構造研究に取りかかる。同時に、今年度行ったネフ対角線集合をもつ多様体の構造研究も行う。まず、VMRT関連の研究については、与えられたファノ多様体上の極小有理曲線の普遍族を用いることにより研究を行う。ネフ対角集合をもつ多様体の研究に関しては、有理曲線の変形理論を用いることにより曲線のなす錐の構造を調べる。また、ネフ対角集合をもつことにより、どのような位相的制約が課されるかについても考察をする。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Mathematische Nachrichten
巻: 印刷中 ページ: -
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Mathematische Zeitschrift
巻: Volume 286, Issue 3-4 ページ: PP. 1421-1433
10.1007/s00209-016-1807-6
Annali della Scuola Normale Superiore di Pisa
巻: XVII, issue 2 ページ: PP. 573-607
10.2422/2036-2145.201508_007
http://www.rimath.saitama-u.ac.jp/lab.jp/Kiwamu.Watanabe.html