研究課題/領域番号 |
17K14156
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 健治 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任研究員 (00793986)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | K3曲面 / 格子理論 / 自己同型 / 有限群 / 無限群 / 保型形式 / ミラー対称性 / 代数幾何 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、K3曲面の自己同型と周期の研究を行った。K3曲面は主に複素数体上定義されたものが考察対象である。得られた研究成果について、一部はプレプリント(論文)としてまとめており、完成次第公表する予定である。なお、既に得られた成果をまとめた(共著)論文2つが出版済み及び採択済み(出版予定)である。 (1) K3曲面の自己同型の研究を進めた。手法としては主に格子理論を用いた。ピカール数2の場合は既に成果を得て論文を発表したが、現在はよりピカール数が大きい場合について研究している。この研究においては、しばしば無限群について調べる必要がある。一般に無限群を研究することは難しいが、無限群についての既存の結果を応用するなどして、ある程度の成果を得た。(Kwangwoo Lee 氏との共同研究) (2) K3曲面(の周期)と関連した保型形式(のなす環)についての研究を前年度に引き続き行った。言い換えると、(特殊な)保型形式環を幾何的な観点から調べた。特に、ピカール数が18、すなわちパラメーターを2つもつ、ある特殊なK3曲面の族について詳しく調べた。この族の特徴として、トーリック幾何及びヒルベルト・モジュラー曲面を用いた研究が有用であることを観察した。(植田一石氏、永野中行氏との共同研究) (3) 前年度に引き続き、完全交叉として実現されるK3曲面のミラー対称性について研究を行った。得られた研究成果は非常に特殊な場合についてのものであるが、その一般化の可能性も模索している。また、この構成を3次元の場合、即ちカラビ・ヤウ(3次元)多様体に適用する研究も進行中である。(Hwayoung Lee 氏との共同研究)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある程度の成果を得ることができた。研究成果を論文にまとめる作業を進めている。また、得られた成果をさらに進展させた研究も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
K3曲面に作用する群の研究については、ピカール数3以上の場合を考察するなど、より複雑な群の研究に取り組む。また、K3曲面に対応した保型形式環についても、パラメーターが多い場合(すなわちピカール数は小さくなる)の考察を行う。また、ミラー対称性については、K3曲面について得られた成果の3次元カラビ・ヤウ多様体における類似を探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により当初の予定の通りに計画をすすめることができなかった。特に、共同研究者との研究打ち合わせを行うことに困難があった。
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