p進微分方程式の代表的な例は、ガウス超幾何微分方程式などの代数体上定義された常微分方程式をp進体上の微分方程式とみなしたものである。p進微分方程式は、その出自より代数体上の数論幾何への応用が期待されているが、そのための基礎研究が不十分であった。p進微分方程式の解の収束半径に関する研究は、2010年以降、Kedlaya、Baldassarri、Poineau、Pulitaらによりめざましく進歩した。本研究では、p進微分方程式の解の対数的増大度の研究の基礎を研究した。解の対数的増大度は解の収束半径の精密化であり、数論幾何からくるp進微分方程式のフロベニウス固有値と関係しており、将来的な数論幾何への応用の観点から、重要な不変量である。
本研究での1つ目の大きな成果は、対数的増大度の研究の基本定理であるChiarellotto-Tsuzuki予想を肯定的に解決である。これは、2021年度にCompositio Mathematicaに掲載された。さらに、Chiarellotto-Tsuzuki予想の、$p$-adic local monodromy theoremと両立する一般化の証明を与えた。この結果を含むプレプリントを執筆中である。最終年度では、polyannuli上のp進微分方程式の研究を行った。n個の導分が可換に作用する完備付値体上を考え、n=1の場合の分解定理を拡張の可能性を考察し、Kedlaya-Xiaoによる分解定理の精密化を証明した。これらの結果をまとめたプレプリントを執筆中である。
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