研究実績の概要 |
トーリック多様体の双対欠損についてはGale双対やサーキットなどとの関連を研究したが,特に進展は得られなかった.その一方でアーベル多様体上のシジジーについては以下のような進展があった. Pareschi氏,Jiang氏,Caucci氏により,偏極アーベル多様体に対しbasepoint-freeness thresholdという不変量(以下BFTと略す)が定まり,その不変量が小さいならば偏極を与える直線束の高次のシジジーが消える((N_p)と呼ばれる性質が成り立つ)ことを示した.当該年度はこの不変量を計算,評価する方法を研究し主に以下の結果を得た. (1) 部分アーベル多様体と直線束の交点数とBFTの関係を調べ,伊藤,Lozovanu氏,Caucci氏による(N_p)やBFTに関する予想を3次元の場合に肯定的に解決した. (2) (1,...,1,d)型の一般の偏極アーベル多様体に対しBFTの上界及び下界を求め, (N_p)が成り立つための十分条件を与えた.特にFuentes-Garcia氏の(1,...,1,d)型の一般の偏極アーベル多様体が射影正規であるための必要十分条件に関する予想を肯定的に解決した. (3) Pareschi氏,Popa氏はアーベル多様体上の層に対しM-regularという概念を導入し,それを用いて層が大域切断で生成される十分条件などを与え,その応用として(N_p)やjet amplenessなどの直線束の正値性に関する結果を得た.当該年度はその十分条件をBFTを用いて精密化し,Pareschi氏,Jiang氏,Caucci氏,Popa氏らによる(N_p)やjet amplenessの結果を一般化した.
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