研究実績の概要 |
トーリック多様体の双対欠損についてはガウス写像との関連性,類似性について研究を行ったが,特に進展は得られなかった.その一方で,2020年度の研究を踏まえてアーベル多様体上のシジジーに関して以下のような研究を行った. 代数多様体の射影空間への埋め込みが与えられた時,その定義多項式の間の関係式やその関係式の間の関係式等はシジジーと呼ばれる.「p番目までのシジジーが単純になる」とき,その埋め込みは条件(N_p)を満たすという.一般にこの条件が満たされるかどうかを確認するのは容易でないことが多いが,アーベル多様体の場合は比較的よく調べることができる. Pareschi氏とJiang氏は偏極アーベル多様体に対しbasepoint-freeness thresholdという不変量(以下BFTと略す)を導入し,彼ら及びCaucci氏はその不変量が小さいならば(N_p)が成り立つことを示した.したがってBFTを具体的に計算,評価することは重要であり,最近その方法が進展してきている. 偏極アーベル多様体に対し,「型」と呼ばれる正の整数の列が定まる.2020年度には(1,...,1,d)型の一般の偏極アーベル多様体に対しBFTの評価を行ったが,当該年度はその結果を一般の型に対して拡張した.その応用として ・大域切断の次元が2^{2g-1}より大きい一般のg次元偏極アーベル多様体は射影正規であることを示した.なおこの2^{2g-1}はこれ以上小さくすることはできないこともわかる. ・偏極アーベル多様体の超曲面がInfinitesimal Torelli Theoremを満たすための,型に関する具体的な十分条件を与えた.
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