研究実績の概要 |
平成29年度は, 以下の研究を行った. (1) Castelnuovo-Mumford 正則度(以下正則度と略す)とh多項式の次数に関する研究(日比孝之氏との共同研究) 次数付き環に対し, そのヒルベルト関数の分子に現れる多項式をh多項式という. Cohen-Macaulay環に対しては,正則度とh多項式の次数が一致することが知られているが, 一般の状況で, 両者の不変量の間にどのような関係があるかは知られていなかった. 日比孝之氏(大阪大学)との共同研究において, 我々は次の定理を証明した : 任意の正整数 r, s に対し, 正則度が r であり h 多項式の次数が s であるような環が存在する. この結果を論文"Regularity and h-polynomials of monomial ideals" にまとめ, 投稿した. また, この結果を日本大学特異点論セミナー, 第30回可換環論セミナー, 日本数学会2018年度年会で発表した. (2) 3-linear resolutionを持つ edge ring の分類(日比孝之氏,土谷昭善氏との共同研究) d次の斉次元で生成される斉次イデアル(あるいはその剰余環)でlinear resolution を持つものを, 特に d-linear resolution を持つという. Edge ring は単純グラフに付随するトーリック環であり, 大杉-日比により, 2-linear resolution を持つ edge ring が分類されている. 日比孝之氏および土谷昭善氏(大阪大学)との共同研究において, 3-linear resolution を持つedge ring は超平面に限ることを示した. この結果を論文"Edge rings with 3-linear resolutions" にまとめ, 投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Koszul 性と関連の深い不変量である, Castelnuovo-Mumford 正則度に関して興味深い結果が得られた. また, 3-linear resolution を持つ edge ring の分類にも成功した. 両者とも, 新しい研究課題を生み出した結果である. 以上の理由により, 本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後, 以下の課題に取り組んでいく. (1) 研究実績の概要で述べた通り, 日比孝之氏との共同研究研究において, 次の結果を示した : 任意の正整数 r, s に対し, 正則度が r であり h 多項式の次数が s であるような環が存在する. ここで構成した環は, Buchsbaum性すら満たしておらず, 環論的には大変性質の悪いものとなっている. Buchsbaum性を仮定した際に, 正則度とh多項式の次数の間にどのような関係があるかを調べる. (2) 3-linear resolution を持つ edge ring は超平面に限ることを示した. 4以上の d に対しても, d-linear resolution を持つ edge ring は超平面に限ることを示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 物品費に関しては, 当初研究用のパソコンを購入する予定であったが, 購入を次年度以降にずらしたため. 旅費に関しては, 節約に努めた結果, 余剰金が生じた. 使用計画: 平成30年度より北見工業大学に着任したため, 出張の際は航空機を用いることが基本となり, これまでよりも旅費がかかることが予想される. そのため, 次年度使用額は主に旅費として使用することを計画している.
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