研究実績の概要 |
平成30年度は, 主にエッジイデアルの研究を行った. エッジイデアルはグラフに付随する単項式イデアルであり, 剰余環がKoszul代数となることが知られている. 具体的な研究内容は以下の通りである. (1) Castelnuovo-Mumford正則度(以下正則度と略す)とh多項式の次数に関する研究 : 任意の正整数r, sに対し, 剰余環の正則度がrであり, かつh多項式の次数がsであるようなエッジイデアルを構成した(日比孝之氏, Adam Van Tuyl氏(McMaster大学)との共同研究). この結果をまとめた論文が論文誌 The Electronic Journal of Mathematics から出版された. さらに, この結果の一般化として, 両不変量に加えてグラフの誘導マッチング数も任意の値をとることを示した(日比孝之氏, 菅野裕樹氏(大阪大学)との共同研究). この結果を論文にまとめ, 投稿した. (2) エッジイデアルの極値的ベッチ数(extremal Betti number)の研究:任意の正整数 b≦r に対し, 極値的ベッチ数の個数が b かつ正則度が r となるエッジイデアルを構成した(日比孝之氏, 木村杏子氏(静岡大学)との共同研究). この結果をまとめた論文が論文誌 Archiv der Mathematik に受理された. また, この結果を日本数学会2019年度年会で発表した. (3) Cameron-Walkerグラフ(以下C-Wグラフと略す)に付随するエッジイデアルの研究:C-Wグラフとは, 誘導マッチング数とマッチング数が等しいグラフのことである. C-Wグラフに付随するエッジイデアルの剰余環のa不変量が0となることを示した(日比孝之氏, 木村杏子氏, 土谷昭善氏(大阪大学)との共同研究). この結果を論文にまとめ, 投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はGorenstein二次代数のKoszul性に関する問題を考えていたが, 年度末にarXivにあがった Mastroeni-Schenck-Stillman による2本の論文に完全に先を行かれてしまった。 しかしながら, 本年度から開始したエッジイデアルの研究が想像以上に上手くいった. そのため, トータルでは順調に進展していると評価した.
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