研究課題/領域番号 |
17K14166
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森本 和輝 神戸大学, 理学研究科, 講師 (20725254)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 保型L函数 |
研究実績の概要 |
前年度から取り組んでいた奇数次ユニタリ群の場合のShimura型Rankin-Selberg積分に関するDavid Soudry(Tel Aviv University)との共同研究では、局所積分の不分岐計算を完成させることが出来た。前年度までに証明できていた解析的性質と合わせることで、この局所積分の基本的性質が全て得られた。また、この不分岐計算では、適当な型のBesselモデルについて、その明示公式を与えるCasselman-Shalika型の公式を証明している。この結果は局所積分の解析とは独立して重要な結果である。これらの結果は論文としてまとめ、現在投稿中である。 本年度から新たに、GL(2)の正則保型形式について、その対称積L関数の特殊値の代数性に取り組んだ。実際、Grobner-LinによるGL(n)xGL(n-1)の場合のL関数の特殊値の代数性、GL(n)の随伴L関数の特殊値の代数性と、Garrett-Harrisによる3重積L関数の特殊値の代数性、Pitale-Saha-Schmidtによる次数2のSiegelモジュラー形式の標準L関数の特殊値の代数性を組み合わせることで、4次の対称積L関数の特殊値の代数性を証明することができた。さらに、Garrett-Harrisの結果の代わりに、森本によるGL(2)の3次対称積リフトとGL(2)の正則保型形式とのテンソル積L関数の特殊値の代数性を組み合わせることで、6次の対称積L関数の特殊値の代数性を1つの点で証明することが出来た。 前年度までに証明できていた偶数次ユニタリ群の場合のLapid-Mao予想についての結果、形式次数予想についての結果を論文として完成させ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4次以上の対称積L関数の特殊値の代数性は重要ではあるものの、期待された形での代数性はこれまでに証明された場合はなかった。本研究の結果は代数性についての予想であるDeligne予想の観点のみならず、その数論的応用という点から考えても非常に意義深い結果である。 上記のRankin-Selberg積分は保型表現の重要な構成法であるDescent法に現れる局所セータ積分であり、この局所ゼータ積分の基本性質からはDescent法に関連した保型表現・保型L関数への応用が期待出来る。
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今後の研究の推進方策 |
対称積L関数の特殊値に関しては、6次の場合に全ての臨界点において代数性を証明するために、Pitale-Saha-Schmidtによる次数2のSiegel保型形式の標準L関数の特殊値の代数性をより一般の次数の場合に拡張する。また全ての指標についての捻りを考察するためにベースチェンジを用いた手法を考察したい。 前年度に引き続き、古澤昌秋(大阪市大)との共同研究である一般化されたBoecherer予想を考察するために、unitary dual pairについて様々な状況でWhittaker周期の引き戻しを計算する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月に京都大学数理解析研究所で開催された国際研究集会に講演者を1名、国外から招へいする心づもりであったが,講演者の都合によりキャンセルになり、本補助金を使用しないことになってしまった.また、今年度に新たに取り組んだ問題は重要ではあるものの、既存の結果を合わせることで証明できるものであり、他の研究者より早く論文を完成させる必要があった。そのため、出張等よりも論文執筆を優先させ、出張回数が予定より少なくなった。 未使用額は海外で開催される研究集会への渡航費用や、書籍等の資料の購入に充てることで、本研究をさらに発展,深化させたい。
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