研究課題/領域番号 |
17K14167
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三井 健太郎 神戸大学, 大学院理学研究科, 助教 (70644889)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トーサー / 主等質空間 / 代数群 / モデル / アーベル多様体 / ネロンモデル |
研究実績の概要 |
群スキームが作用するモデルが底空間上固有でない場合に,群スキームが作用するようなモデルの相対コンパクト化を試みた.まず,トーサーが良い条件を満たすとき,底空間上固有であるようなモデルが構成できることを示した.この条件は,群スキームの同変コンパクト化の構成問題と関係付けられる.例えば ,底空間がデデキントスキームであり,群スキームが準安定還元を持つ曲線のヤコビ多様体のネロンモデルである場合には,同変コンパクト化の存在が知られているので,底空間上固有なモデルを構成できる.一般のアーベル多様体の場合も,モデルの相対コンパクト化の問題は,ネロンモデルの同変コンパクト化問題と関係している.代数群が分裂トーラス還元を持つようなアーベル多様体の場合には,ネロンモデルの連結成分が作用するような相対コンパクト化は,凸幾何の応用により構成できることが知られている.今回の研究では中村郁氏の協力のもと,ネロンモデル全体が作用するような相対コンパクト化を一定の条件の下に構成した.この問題に取り組むため,リジッド幾何によるアーベル多様体の一意化理論を応用して,トーラス還元の場合へ問題を帰着させた.さらに,複素解析的な場合の相対コンパクト化の手法を代数化してこの問題に取り組んだ.底空間が1次元で群スキームが楕円曲線のネロンモデルの場合には退化に関する条件の付かない一般的な結果が得られ,種数1の曲線へのヤコビ多様体の作用が曲線の極小正則モデルへのヤコビ多様体のネロンモデルの作用に一意的に拡張できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
群スキームが準安定還元を持つ曲線のヤコビ多様体のネロンモデルである場合には,モジュライ解釈を用いた相対コンパクト化の存在が知られていたが,それとは全く異なるテータ関数を用いた方法でネロンモデルの同変コンパクト化を構成する事ができた.特に,1次元の場合には退化に関する条件の付かない一般的な結果が得られた.さらに研究の中で,トーサー以外の代数群が作用している代数多様体の場合にも,モデルの同変コンパクト化から相対コンパクト化を構成する方法を一般化できることが明らかになり,より応用範囲の広い理論の構築が期待できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
モデルの幾何学的不変量を研究する.束構造を持つ代数多様体の分類は発展途上にあり,代数幾何における重要な問題の一つである.しかし,低次元の場合を除き,ホッジ数,小平次元,基本群といった不変量の具体的な計算は一般には困難である.従って,束構造を持つ代数多様体の分類において不変量の計算法の確立は主問題である.また,基礎体の標数が0の場合と比べ,正標数の場合,この問題はより難しく解明されていない点が多い.モデルは代数多様体族であり,その研究において特異ファイバーの解析が重要である.群スキームの基底変換の有限群による商としてトーサーを構成するので,特異ファイバーの研究のために,商特異点や商写像の分岐を調べてモデルの不変量を求める.これまでの研究で,楕円曲面に関しては一般標数の場合も含めて,特異ファイバーと双対化層や基本群などの不変量の間の関係を明らかにしてきた.一般の場合にも特異ファイバーを通じて不変量は互いに関わり合っており,この事実を使って不変量間の関係を明らかにする.商写像は一般ファイバ ーでは分岐しないが,他のファイバーに沿って分岐することがある.この分岐を調べることで特異ファイバーの構造が解明できる.また,商に生じる特異点についても解析する.これらの結果により,モデルの双対化層や基本群を求める方法を確立する.基礎体が正標数であっても次元の低い場合については,有限群による商特異点の研究を進めており,そこで得られた結果を応用する.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外における研究打合せが双方の都合により延期になったため今年度中に使用する予定である.
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